2011年、本屋大賞受賞作品、という売り込みはこの作品にはいらない。今さら三浦しをんの新作に本屋大賞を与える必要なんかないのではないか。もっと若手で、誰も知らないような作家の作品に目を付けて日の目を当ててくれたならうれしい。まぁ、書店員のみなさんにそんなことを言っても始まらないだろうけど。
それにしても、取り上げた内容の地味さと、見せ方の軽さのあやういバランスは、かなりスリリングだ。途中からあまりの安っぽさに、「どうした三浦しをん!」と、つっこみを入れたくなる。これは彼女が「お軽いエッセイ」を書いているときのタッチである。この感動のドラマは『風が強く吹いている』のあの感じで、ラストまで行ってもらいたかった。冗談のような話が、だんだん本気になっていく、というパターンだ。なのに、これは反対で、本気の話が、後半には冗談のようになってしまう。
15年に及ぶ辞書編纂の苦難に満ちた道のりを、ここまで軽く書いていいのか、と心配するくらいだ。しかし、三浦しをんはベテランだから、ちゃんと計算の上で、このあやういバランスをキープして、ラストまで走り抜けてくれる。思い込みが過剰にならないように、主人公たちと距離を置くため、視点を各章で、ばらけさせて複数の目からドラマを編む。大長編ではなく、普通の長編程度のボリュームにして、さらりと流す。けっこういろいろ考えてあるのだが、いかんせんこの軽さ、作品自体の感動を薄めてしまう。でも、これは仕事の話なのだ。15年かけたプロジェクトであろうとも、やり遂げた後は明日も仕事は続くから。そう思うと、あのラストの淡さは、あれはあれでリアルなのかもしれない。
それにしても、取り上げた内容の地味さと、見せ方の軽さのあやういバランスは、かなりスリリングだ。途中からあまりの安っぽさに、「どうした三浦しをん!」と、つっこみを入れたくなる。これは彼女が「お軽いエッセイ」を書いているときのタッチである。この感動のドラマは『風が強く吹いている』のあの感じで、ラストまで行ってもらいたかった。冗談のような話が、だんだん本気になっていく、というパターンだ。なのに、これは反対で、本気の話が、後半には冗談のようになってしまう。
15年に及ぶ辞書編纂の苦難に満ちた道のりを、ここまで軽く書いていいのか、と心配するくらいだ。しかし、三浦しをんはベテランだから、ちゃんと計算の上で、このあやういバランスをキープして、ラストまで走り抜けてくれる。思い込みが過剰にならないように、主人公たちと距離を置くため、視点を各章で、ばらけさせて複数の目からドラマを編む。大長編ではなく、普通の長編程度のボリュームにして、さらりと流す。けっこういろいろ考えてあるのだが、いかんせんこの軽さ、作品自体の感動を薄めてしまう。でも、これは仕事の話なのだ。15年かけたプロジェクトであろうとも、やり遂げた後は明日も仕事は続くから。そう思うと、あのラストの淡さは、あれはあれでリアルなのかもしれない。