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映画・演劇のレビュー

『信長協奏曲』

2016-02-23 20:51:38 | 映画

 

散々酷評されているこの大ヒット作をようやく見た。TVシリーズも数話見ているけど、それほど熱心なファンではない。ドラマを見てる分には、発想はおもしろいと思うけど、それが上手く生かされているとは思えなかった。それだけに、わざわざ劇場に行く必要はなかったのだが、たまたま付き合いで見ることになった。でも、思っていた以上に楽しめたので、よかった。

 

もちろん、問題がないわけではない。というか、山積みだ。まず、もう少し映画としてのリアリティが欲しい。これではTVスペシャルの域を出ない。説明的だし、しかも、その説明を延々とするから、そこでストーリーが止まってしまう場面が多々ある。映画はセリフではなく、映像の力で見せるものだと思うから、つまらない解説は慎むべきだろう。TVディレクターは、TVサイズで作るからすぐにこういう愚を犯す。もうそこまで敵が来ているのだからのんびりとおしゃべりしている場合ではないだろ、と思う。これはTVスペシャルを劇場公開しているのだから、まずTVサイズで作ろう、というのなら、それでいいのかもしれないけど、そんなバカな話ではあるまい。同じTVドラマでタイムスリップものの『仁』と比較すると、これはあまりに生ぬるいな、と思う。まぁ、それって切実さの問題だし、方向性も違うのだろうけど、歴史を変えてしまっても、今目の前にいる人たちを助けたいという想いでは共通している。

 

本能寺の変の描き方も運命とどう戦うのか、という地点からもっとドラマチックに見せることはできなかったのか。自分がただの影武者ではなく、自分の意思で時代を変えようとしたこと。それによって、本物の信長すら変えることができたのだ。その事実が歴史をどう変えるのか、変えられないのか、も含めて、ちゃんとした答えが欲しい。あれでは、ただのつじつま合わせにしか見えない。自由奔放な信長(偽物だけど)が、復讐しか考えない秀吉にどんな影響を与えたのかも描けていないし。

 

ラストで現代に戻ってきてからの部分も、あそこまで描くのならば、もう少しやりようがあったのではないか。あの程度のオチではなく、サブローが信長として生きた時間をどう生かしてこの時代で生きようとするのかも見せて欲しい。いろんな意味で中途半端な作品だし、TVのオチを映画館でつけるってなんだか、観客をバカにしてる気がするけど、見に来たお客さんは満足しているのなら、興行としては成功なのだろう。

 

 


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