実話の映画化であることをことさらに強調したいのなら、ドキュメンタリーでいいのではないか。敢えて劇映画にするというのならば、劇映画としての矜持を示してもらいたい。確かに感動的な映画ではあるだが、見ながらなんか引っかかることばかりで、すっきりしない。ラストでモデルとなった実際の主人公や両親、実の母親の姿が映されたとき、最初からそれだけでよかったじゃん、と思ってしまった。そう思わせるところがもうこの映画の敗因であろう。
この映画には映画であることの興奮がない。丁寧なストーリーはある。でも、それは事実の再現でしかない。よくあるTVの再現ドラマだ。あれと似ている。それってまずくないか。この先どうなるのだろうか、というドキドキのない映画は映画ではない。もちろん実話だから、フィクションを交えることはない。しかし、現実の絵解きであるだけでは意味がない。
すばらしいロケーションの中、壮大な驚きの物語が展開する。だが、それがただの予定調和でしかないことにショックを受けた。映画を見ながら、眠くなった自分に驚く。(レイトショーで見たからかもしれないけど、それだけではない気もする。)期待が大きかったこともあろうが、僕はこの映画をあまり買わない。