ジョーダン・ピールの第3作。最初の『ゲット・アウト』がまさかの展開で衝撃的だったが、2作目の『アス』は、無理しているな、と思った。確かにこれもまたまさか、という展開なのだが、最初から仕掛けがあるぞ、と構えているから、なるほどね、というふうに余裕で対応してしまう。2匹目のドジョウはなかなかいない。不意打ちのような映画は1度だけ。そんなことは先輩のシャマランが何度となく失敗してきたから、わかっているはず。
シャマランの最初の一撃『シックスセンス』のラストにはたまげた。その手があったのか、という驚き。その後、たくさん作っているけど、あの驚きを上回ることはない。それどころか縮小再生産状態で、どうあがいても無理。ジョーダン・ピールも見事に同じ轍を踏む。でも、彼は果敢にあの手この手で挑戦する。だから好き。でも、ジョーダン・ピールは大予算に胡坐をかいて、攻めに入ることなく守りに入っている。
本作のUFOなんてシャマランの『サイン』ですな。しかもまるでお話に仕掛けがない。雰囲気だけで引っ張っての肩透かし。これはないな、と思った。事前の情報漏洩を恐れたのか、いろんなものが秘密裡のままで公開されたが、今ではそれはこれがへぼいということを隠すための秘策だったのか、と勘繰る始末。それくらいにつまらない。ここにはなんら狂気に至るドラマがない。スピルバーグの名作『未知との遭遇』なんかをいまさら引き合いに出すのはどうだか、と思うけど、先人の偉業を踏まえて、これでは情けない。
せめてこのシンプルなタイトルの指し示すものを提示できなかったのか。無理、に挑んだはずなのに、それが無理なら洒落にもならない。まずなによりも、お話のテンポが悪い。わざとこういうイライラするようなテンポを提示したのだろうが、それに何の意味も持たせない内容ではただの不快なこけおどしでしかないではないか。でも、それでもそれなりの期待は高めたはずなのだから、どんな仕掛けを施すのか、と終盤に期待する。
だが、底が割れた。ざる状態だ。仕方ないから、迫力の映像でけむに巻くしかない。アイマックスで見たら凄いよ、なんていう時点で映画を放棄している。これはただの見世物なのかい、とがっかりする。ここまでの2作品と違い、ここにはなんの驚きもない。そのことに反対に驚く始末だ。こんな終わり方でいいの、と見ているこっちが不安にさせられるほどのあっけなさ。
「何か」がやってきている。「それ」を見てはいけない。では、どうして戦うのか。なぜ、「やつら」は来たのか。自分たちは「それ」とどう向き合うのか。「それ」がどういう結末に向かうのか。だが、ここには僕たち観客の想像力なんかを吹き飛ばすような強烈な一撃はない。無残だ。