花形みつるという凄いペンネームを持つ児童文学の作家さんの小説を初めて読む。このタイトルに惹かれた。かなりおもしろい。読みやすくて気持ちにいい作品だ。新太郎(子供たちにはその髪型からキタローと呼ばれる)と子供たちとの交流を甘く優しく描くのではなく、かなりリアルでそこそこシビアに描く。でも、なんだかとても暖かい。教育問題にもの申す、という大袈裟はもちろんない。だが、さりげなく、描かれる子供たちとの関係性は今という時代を考えると、結構理想的ではないか。子供に対してどう接していくのか、ということの基本がちゃんと描かれてある。しかし、なかなかそうはいかないのが現状だろう。
失恋からひきこもりになった18歳の大学生が、小1から小3までの児童と遊ぶこと(遊び塾)を仕事にする(実際の仕事は学習塾で、遊び塾は週末のイベントなのだが)ことで、子供たちのあまりにリアルな反応に最初はとまどうが、少しずつこの本能のままのおさるさんたち(男子たちのことをそう呼ぶ)を通して、人間らしさを取り戻していく。
子供の頃、僕たちはもっと自由だった。思いのまま生きていた。でも、少しずつ不自由になり、社会のルールに縛られて自由を失った。この小説は失った自由を取り戻すための心の旅である。でも、これは大人の考えたメルヘンでしかない。現実はこんな理想のようにはいかない。だけど、もう一度だけ、こうして理想をみつめることでそこからあるべき自分たちの姿が見えてくるはずだ。
主人公の新太郎を見守るおっさん(塾の経営者である正宗さん)の視点から、挫折を通して現実を突きつけてきてもよかったかも、とは思う。だが、このおっさんの現実は理想に向けての静かな第1歩でもあるから、ことさら彼の過去を詮索してもなんら面白いドラマは生まれないことだろう。ここにある現実を大事にする。それだけでいい。
失恋からひきこもりになった18歳の大学生が、小1から小3までの児童と遊ぶこと(遊び塾)を仕事にする(実際の仕事は学習塾で、遊び塾は週末のイベントなのだが)ことで、子供たちのあまりにリアルな反応に最初はとまどうが、少しずつこの本能のままのおさるさんたち(男子たちのことをそう呼ぶ)を通して、人間らしさを取り戻していく。
子供の頃、僕たちはもっと自由だった。思いのまま生きていた。でも、少しずつ不自由になり、社会のルールに縛られて自由を失った。この小説は失った自由を取り戻すための心の旅である。でも、これは大人の考えたメルヘンでしかない。現実はこんな理想のようにはいかない。だけど、もう一度だけ、こうして理想をみつめることでそこからあるべき自分たちの姿が見えてくるはずだ。
主人公の新太郎を見守るおっさん(塾の経営者である正宗さん)の視点から、挫折を通して現実を突きつけてきてもよかったかも、とは思う。だが、このおっさんの現実は理想に向けての静かな第1歩でもあるから、ことさら彼の過去を詮索してもなんら面白いドラマは生まれないことだろう。ここにある現実を大事にする。それだけでいい。