3部作構成のアニメ映画の第1章。最近、こういうタイプの映画が多いけど、それはあまり好きではない。映画はその1本だけで完結して欲しいからだ。だが、大きな話をダイジェストにして見せても仕方ないから、丁寧に内容に見合う尺を用意するのは誠実なやり方なのかもしれない。ただ、商売を考えて引き延ばすだけの映画もあるから、いろいろだ。実写版『進撃の巨人』なんてどう考えても3時間の映画だろう。それを2本に分割して2倍稼ごうとした。製作費をペイするためにそうなったのだろうが、なんかつまらない。
さて、この映画である。これは実に面白い映画だ。宣伝用のマンガを読んでとても面白いなと思ったので、少し期待していたのだが、期待以上だ。発想の面白さをそれだけには終わらせないで、ちゃんとそこをスタートにしてその世界をどんどん広げていく。予想もしないところへと話が広がる予感がある。しかも、難しいことをいうのではない。主人公の高校生がわけのわからない状況と向き合い対応していくという枠組みでの困難なので、彼と一緒に彼の目線で状況を受け止めていくことになるのがいい。
単純な設定だ。新しい人類としての「亜人」という存在が広がっていきつつある。彼らは死なない。一度死んだら亜人か否かが分かる。交通事故により、日本で4人目の亜人だと確認された彼は警察だけでなく、あらゆる組織から狙われる。その網の目をくぐりぬけてのサバイバル。そして、事件の真相に至るドラマがここから展開していく、はずだ。
小さなところから、大きなところへと。実に心地よく話が流れていく。106分の上映時間が適切。誰が敵で誰が味方なのか、わからないまま、逃亡を続ける。行く当てのない逃走劇。お話の滑り出しとしては上々だ。何が自分に起きたのか。どうすればいいのか。そういうストーリーの面白さだけではなく、主人公の人物設定の異常さが際立つ。彼は極端な合理主義者で、人間らしさがない。冷たい。どうして、そんな性格なのか。それと、彼が亜人だったこととは何らかの関係性があるのか。外と内の両面からのサスペンスでお話を進行させていく。実にうまい。主人公に共感できない。違和感がある。でも、気になる。そういうスタンスもうまい。さらには、それがお話の根幹に関わりそうだ、ということ。緊張の持続がそこから可能になる。
次は来年の6月まで待たされるらしいが、そんなのは別に構わない。安易に作るのではなく、ちゃんと作って期待を上回る作品にして貰えたら最高だ。こういう意味のある「本当の大作」映画(製作費の多寡が問題ではない)が見たかった。これは思いがけない拾い物である。