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映画・演劇のレビュー

『モンスターズクラブ』

2012-05-18 20:34:41 | 映画
 同じ日に『KOTOKO』と『モンスターズクラブ』を2本続けて見てしまったのは、ちょっとした不幸だったと思う。どちらも同じように、ほぼ登場人物がひとりで、閉ざされた空間を舞台にして、自分を精神的に追い詰めていく話である。この2本立は見ていてかなりきつかった。それでも『KOTOKO』はまだいい。好き嫌いはあるにしても、映画自体が力を持っているからだ。

 豊田利晃監督の『空中庭園』はとても好きな映画だったが、あの映画の後、刑務所に入り、ようやく復帰してからの彼の映画は、なんだか独りよがりでつまらない。前作の『蘇りの血』も酷かったが、今回もまた、自爆テロのような映画だ。しかも、糞詰まりで。

 雪原の山奥でひとり暮らす男のもとに死者が訪れる。弟と兄だ。彼らの幻と向き合いながら、彼は孤独のなかで、爆弾を作り続ける。それを「殺すべき人々」に送りつける。世界を変えるためだ。この妄想男の内面を彼の日常生活の描写の中からあぶりだそうとするのだが、まるで観客であるこちらの胸には届かない。自閉的な映画だ。72分というスリムな上映時間は、内容の空疎さしか伝えない。

 彼がなくしてしまった家族への想いも描かれるには描かれるのだが、それが彼にどんな影響を与えたのかがまるで伝わらない。これみよがしのさりげなさの押し売りで、気取って見せるが、これでは意味がない。宮澤賢治もこんな引用をされて、迷惑しているのではないか。語るべきことを言葉で描くのはよくない。そのくせ、語らなくてもいいことを映像にする。何か勘違いしているように思うのだ。『KOTOKO』には良い悪いはともかくとしてちゃんと衝撃を受けたのだが、この映画を見ても何も感じなかった。期待していただけに、かなりがっかりした。だから、厳しいことを感情的に書いてしまった。気持ちに映画が追いつかないのだからしかたない。

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