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映画・演劇のレビュー

『コンテイジョン』

2012-05-26 19:40:24 | 映画
 ソダバーグ監督の新作は、パンディミックを扱うドキュメンタリー・タッチの作品だ。こういう題材を映像として見せるのが難しい。派手な描写は皆無だ。大体そういうパニックシーンやら、炎上や、アクションとかとは、無縁の映画なのである。では、彼はどういう方法論を取るのか。

 彼は、これをまず、オールスター映画として見せようとする。それはこの作品を大作映画として箔をつけるためではない。マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロウ、ローレンス・フィッシュバーンら、豪華キャストは単なる顔見せではなく、冒頭で普通の映画なら主役のはずのグウィネス・パルトロウを簡単に殺してしまったり、ケイト・ウィンスレットもあえなく感染して離脱したりという、意外性を強調する。誰がどうなるかは分からない、ということなのだ。それは地球規模で、新種のウィルスが感染し拡大していく様をリアルに描くための方策でもあった。一応主役に見えるマット・デイモンですら、見せ場はなく、ただおろおろしているだけに描かれてある。

 これはハリウッド映画の定石にはならない展開を見せる映画だ。ヒーローが世界を救うのではなく、感染を防ぐためのかなり地味で、地道な努力が描かれたりする。しかも、お決まりの陰謀とか、各国間の駆け引きのようなものも、ことさら強調しない。できるだけさりげなく、事実の羅列として描こうとする。

 これだけのキャストを集めたにもかかわらず娯楽映画ではない。どちらかというと、これは社会派だ。だが、世界中の様々な場所での細切れの出来事をコラージュしていき、ここで急速な勢いで進行している感染の経緯と対策をさまざまな地点から見せることで、お話ではなく、事実を目撃するような気分にさせられる。

 悪い映画ではない。というか、ちゃんと良心的な映画で誠実な作品だ。ラストも単純なハッピーエンドなんかではなく、そこそこリアル。2日目から始まり、ラストにエピローグとして持ってきた1日目も、上手い。だが、なんか見終えて、ぐったりとするばかりで、しんどい。疲れた体でこういう映画を見るのは、ちょっと精神衛生上よろしくはない。

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