『時をかける少女』

　とても気持ちのいい映画だった。見てよかった。この愛しい時間を精一杯大切に生きて行きたいと思わせてくれるそんな映画だ。
　
　タイムワープなんてしなくてもいい。やり直せなくてもいい。そんなことはできなくても、この今というときは大切なのだということを教えてくれる。「未来で待っている」と言うラストのせりふもとても感動的だ。ああ、そういうことなんだなと思った。

　３人でずっと遊んでいたかった。恋人でもなく、ただの仲間でいつも一緒でこの時間が永遠に続くと信じていた頃、あの思いを忘れてはならない。

　この映画は大林宣彦監督による『時をかける少女』のリメイクではなく続編である。前作の主人公である芳山和子は主人公の伯母として登場する。彼女は大人になり、学芸員として生活している。彼女はヒロインの真琴にさらりと「タイムワープなんて思春期にはよくあることよ」と言い放つ。

　未来からやってきた青年と彼によって時をかけることになった少女との恋物語というパッケージングは原作と全く同じだけれど、映画自身は完全なオリジナルとして成立している。大林映画へのオマージュもしっかり示した上で今という時代にもう一度この物語を再生させようとする意義も明確に伝えてくれる。

　生きることに対して自信をなくし後ろばかりを見てしまい、大切にしなくてはならない今というときを見失ってしまっている人たちのための応援歌になっているのである。