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映画・演劇のレビュー

『ブレイブ 群青戦記』

2021-03-18 11:34:06 | 映画

これはある意味で新田真剣佑によるもうひとつの『戦国自衛隊』だと考えてもいい。彼の父親である千葉真一のあの代表作と、とてもよく似た設定の作品に彼が挑戦するというのはなんだか興味深いと思った。もちろん全く別の映画なのだが、題材として比較されてもいいくらいに酷似している。真剣佑は父親を越えることが出来たか?

 

ということで、どんな映画になっているのか、とっても楽しみにしていたのだが、まるで乗れない映画になっていた。驚きである。監督は本広克行である。彼の個性が前面に押し出されたら、きっと爽やかな青春映画になったはずだ、と思っていたのに、これは一体どういうことだろうか。わけがわからない。真剣佑もきっと戸惑っている。

 

まず、この映画はゲーム感覚で軽すぎる。なのに残酷なシーンは満載されている。どうしてこういう作り方をしたのか。本広克行監督は発想の面白さやストーリーで引っ張ろうとはしない。そこも疑問だ。桶狭間の戦いを描くのでもない。爽快感はない。高校生が戦国武将に戦いを挑み勝利を勝ち取る、という映画でもない。

 

どちらかというと悲壮感漂う映画なのだけど、嘘くさい。だから乗れないのだ。「歴史は我々に何をさせようとしているのか」という『戦国自衛隊』にはあったような切実な問いかけもない。さらには家康(三浦春馬)との友情物語にもならない。さらには敵である織田信長(松山ケンイチ)とはほとんど接点もない。これではこの映画の何を見たらいいのか、わからない。だいたい残酷なのに切実さがないというのがまずこの映画の欠陥だろう。アクションシーンは満載されているけど、驚くほどではない。しかもドラマ部分はお座なりにされたままだ。

 

さらには真剣佑が大活躍するわけでもない。彼の演じる男のキャラクターは最初はウジウジしていてイライラさせられるし。お話としては定番のヒーローものの展開になるのなら、もっと爽快感のある作り方をしなくてはなるまい。いろんなところが中途半端で、もやもやした気分にしかならない。学園青春ドラマの騎手でもあった斎藤光正監督が千葉真一と夏木勲で撮った『戦国自衛隊』の一番のポイントは時代を越えたふたりの男の出会いと友情だった。今回の『ブレイブ』も根幹をなすものは同じだったはずだ。真剣佑が自分の身代わりになって死ぬ三浦春馬の遺志を受け継ぎ、ここで生きていこうとする決意を描くことこそ、この映画の一番のポイントになる。そこをもっとしっかりと描いてくれたなら、これはこれでいい映画になったはずなのに、残念だ。


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