ギデンズ・コーのデビュー作『あの頃、君を追いかけた』は青春恋愛映画の傑作だった。だが第二作の『怪怪怪怪怪!』は一転してホラー映画。だけど普通のホラーではない。青春映画であり、なんと怪物との友情物語。訳がわからん話だ。そして最新作『赤い糸 輪廻のひみつ』が現在劇場で公開中だが、あれはファンタジーみたいだ。(まだ見ていない)あらゆるジャンルに挑戦するというより、なんか何も考えていないみたいな自由さが彼の作品にはある。きっとあれもこれもやりたいのだ。10年で3作品というのはきっと不本意だろう。そんな彼の快進撃がスタートした。なんと続いてもう1本公開された。
日本未公開だったこの作品がNetflixで配信が始まったのだ。(だが調べたらこれは『赤い糸』に続く第四作のようでこちらが最新映画のようだ)
見てぶっ飛んだ。何なんだ? このわけのわからない映画は、と驚く。ただのバカバカしいコメディかと思っていたが、あまりのバカに付き合い切れない。こんなアホな話で映画としてこれは大丈夫なのかと心配する。「まさかこんなのを本気で考えるのか!」と思って『もしかしたら何か裏があるか?』と思い、見守るが、ない。挙げ句はラストの死のシーンに! あれで終わりの悲恋映画! と呆れるが、エンドロールの後でさらなるお楽しみが。もう呆れるなんて通り越して、なんでもありですな、と思う事に。
コメディだけど、ヤクザ映画にヤケクソなラブストーリーを絡めた作品。一途な想いが描かれるけど、そんな主人公の本気を疑う。彼は雨の夜、死にかけていた彼を助けてくれた彼女に恋をする。普通ならロマンチックな展開になっていくところだ。だが、彼の行動は常軌を逸する。
偶然出会った美容師見習いの女の子、彼女を好きになるヤクザの話という設定みたいだが、彼の行動があり得ない。彼の気持ちも信じられない。バカバカしいコメディにしてはなんだか時々シリアスになる。その揺れ幅は異常。何を意図しているのか、わからない。終盤に彼の秘密が明かされるが、それがまた普通じゃないから、余計に混迷する。破天荒な展開をまるで自然なこととして描くギデンズ・コーは狂っている。ようやく彼の本性が明らかになってきた。そんな気にさせられる怪作である。