ウイングカップ9がスタートした。今回は8劇団が参加する。そして、この劇団三日月の旗揚げ公演がトップバッターである。とても初々しくて気持ちのいいお芝居だった。やりたいことが明確で、それを何のひねりもなくストレートに見せていく。でも、そこがとてもいい。斜に構えることなく直球勝負でなんの衒いもない。
中島卓偉の楽曲をそのまま使ってストーリーを組み立てた。昔、ヒットした歌をそのまま映画化した歌謡映画というのがよくあったが、これはその芝居版。だから当然ラストではしっかり主題歌が流れることになる。
歌の歌詞をそのままイメージしてお話にする。歌から受けた感動をドラマ化する。その無邪気なタッチがいい。夢を叶えるために努力する少年と彼を支える少女。10代の彼らの一生懸命な姿を見守る。10代だからできることを背伸びするのではなく、真っ向から描いていく。今時こんなピュアな恋物語があるのか、と驚かされる。なんだか、気恥しくなるけど、嫌いではない。こんなにも甘いお話だけど、それをこんなにも正直に見せようとするから、僕たち観客は納得する。ここには変なあざとさはない。夢に向かい屈託なく前進していく。その結果力尽きてもかまわない。これはそんな美しいお話だから、それでいい。たわいないといえばそれまでなのだが、こんなにも一生懸命にそれをやられると、なんだか清々しいのだ。