これはなんとミッシェル・ゴンドリーの自伝的映画らしい。14歳の少年がひと夏の旅に出る話だ。自分たちで作った自動車型の家。今回のゴンドリーのガジェットはこの「動くログハウス」だけ。学校に溶け込めない少年と、同じようにクラスに違和感を抱く転校生。今回はファンタジーではない。結構リアルで、ふつうの青春映画だ。彼らの旅をセンチメンタルに描く。青春回顧映画。
あの時、ゴンドリー少年の感じた現実、それを丁寧に描きとる。絵を描くことしか自分を表現する術を知らない。人と上手く関われない。誰も理解してくれない。そんな、思春期の少年なら、誰もが感じるナイーブな心情をそのまま描く。あまりに素直な映画に驚く。特別なことなんか何もない。ありきたりで、切実。等身大の14歳を描くだけ。そこにゴンドリーのこの作品に込めた深い想いを感じる。あの頃の自分たちをもう一度見つめることで、今の自分を再確認する。遠くまで来てしまった自分の原点を見直すことで、この先、どこに行こうか、考えるよりどころになる。
2年ほど前、東京で彼の個展(『ミッシェル・ゴンドリーの世界一周』とかいう感じ)を見た。あそこにあったおもちゃ箱のような世界が今までの彼の集大成であるとしたらなら、これはその原点。ふたつがセットになって、ゴンドリーの不思議な世界の謎の扉が開かれる。このシンプルで美しい青春の1ページに心洗われる。