久しぶりにレトルト内閣の芝居を見た。とてもおもしろかったし、感心もした。こんなふうに成長していたんだ、と納得した。それってなんだかうれしい。しばらく見ない間に、思いもかけない進化を遂げている。凄いと思う。
ほんの少しメジャーになり、たくさんのお客さんから支持を受けるようになって、ダメになっていく劇団はたくさんある。それは自分たちの作り方を観客のニーズに合わせていくうちに、自分たち本来の方向性を見失っていくからだ。それって劇団にとっても、観客にとっても、すごく不幸なことだと思う。反対にマイペースを貫くことで、動員をどんどん減らしていく劇団もある。それはそれでもっと不幸なことだろう。理想は、自分たちも成長し、ファンの満足度も高い、そんな劇団経営であろう。でもそれって思いのほか難しい。今回、レトルト内閣を見ながら、彼らはとてもバランスよく、それが出来ているのではないか、と思った。
無内容なエンタメに走るのではなく、わけのわからないアート志向もない。音楽劇という自分たちのスタイルをベースにしながら耽美的なドラマを作っていくという従来からの方向性には、基本的には大きな変化はないのだろう。以前は、それが幾分ひとりよがりで、自閉的なところもあったが、今回の作品からはそういう面は払拭されている。とてもバランス感覚のいい作品に仕上がっていて感心した。
90分という上演時間の短さもいい。もの凄く短いシーンを、テンポよく積み重ねていきながら、一気にラストまで見せていく。そのくせそこにはなんの無理もない。アイドルのサクセスストーリーというわかりやすいストーリーラインの上に、子供の頃、彼女たち3人が妬みから傷付けてしまった同じグループだった女の子の幻を見る、というスパイスを加味して見せていく。語り口は実に淡々としているのに、お話自身は、凄いスピードでどんどん加速していく。その手法は実に鮮やかだ。
泣かず飛ばずで落ち目のアイドルが、ほんのちょっとした偶然から、ブレイクして、やがては東京ドームでライブをすることになる。そこまでの軌跡が描かれる。だが、これは単純なサクセスストーリーではない。冷静でシニカルな視点は、ぶれることなく最後までちゃんと貫かれる。大事なのはそこなのである。主人公の3人は、事故(それは彼女たちがしでかした事だが)にあった女の霊が見える。彼女が3人を呪うとかいう話ではなく、反対に成功に導くのだ。そこにはいないはずの幻影が3人には見える。そのことを(彼女と出会ったときは)最初は気味が悪いし、驚いていた3人だったが、やがて、それが日常化する。見えてあたりまえという状態になるのだ。このなんとも意外な展開部分を、殊更大きなものとはせずに描いていく。バランスよく、当たり障りなく、最後まで見せてしまうのだ。この醒めた視線がこの作品を成功に導いている。その必要以上に熱くならないクールさがおもしろいと思う。
ほんの少しメジャーになり、たくさんのお客さんから支持を受けるようになって、ダメになっていく劇団はたくさんある。それは自分たちの作り方を観客のニーズに合わせていくうちに、自分たち本来の方向性を見失っていくからだ。それって劇団にとっても、観客にとっても、すごく不幸なことだと思う。反対にマイペースを貫くことで、動員をどんどん減らしていく劇団もある。それはそれでもっと不幸なことだろう。理想は、自分たちも成長し、ファンの満足度も高い、そんな劇団経営であろう。でもそれって思いのほか難しい。今回、レトルト内閣を見ながら、彼らはとてもバランスよく、それが出来ているのではないか、と思った。
無内容なエンタメに走るのではなく、わけのわからないアート志向もない。音楽劇という自分たちのスタイルをベースにしながら耽美的なドラマを作っていくという従来からの方向性には、基本的には大きな変化はないのだろう。以前は、それが幾分ひとりよがりで、自閉的なところもあったが、今回の作品からはそういう面は払拭されている。とてもバランス感覚のいい作品に仕上がっていて感心した。
90分という上演時間の短さもいい。もの凄く短いシーンを、テンポよく積み重ねていきながら、一気にラストまで見せていく。そのくせそこにはなんの無理もない。アイドルのサクセスストーリーというわかりやすいストーリーラインの上に、子供の頃、彼女たち3人が妬みから傷付けてしまった同じグループだった女の子の幻を見る、というスパイスを加味して見せていく。語り口は実に淡々としているのに、お話自身は、凄いスピードでどんどん加速していく。その手法は実に鮮やかだ。
泣かず飛ばずで落ち目のアイドルが、ほんのちょっとした偶然から、ブレイクして、やがては東京ドームでライブをすることになる。そこまでの軌跡が描かれる。だが、これは単純なサクセスストーリーではない。冷静でシニカルな視点は、ぶれることなく最後までちゃんと貫かれる。大事なのはそこなのである。主人公の3人は、事故(それは彼女たちがしでかした事だが)にあった女の霊が見える。彼女が3人を呪うとかいう話ではなく、反対に成功に導くのだ。そこにはいないはずの幻影が3人には見える。そのことを(彼女と出会ったときは)最初は気味が悪いし、驚いていた3人だったが、やがて、それが日常化する。見えてあたりまえという状態になるのだ。このなんとも意外な展開部分を、殊更大きなものとはせずに描いていく。バランスよく、当たり障りなく、最後まで見せてしまうのだ。この醒めた視線がこの作品を成功に導いている。その必要以上に熱くならないクールさがおもしろいと思う。