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映画・演劇のレビュー

満月動物園『ツキノウタ』

2015-03-08 22:07:51 | 演劇
死神シリーズの第2作。第1作である『ツキカゲノモリ』から3カ月のインターバルでの上演。もちろん、それは「僕ら(観客)からすれば」のインターバルだが、彼らにしてみれば連投である。というか、この企画が5連投なのだ。

この無謀としかいいようのない5タイトル連続上演からは、戒田さん(もちろん、作、演出の戒田竜治)がこの作品をどう作ったのか、よく見えてくる。

2作編通して見ると、そこには切り口の違いが明確にされ、なるほど、と納得。2本は同じようなお話なのに、明らかに切り口は違う。初演のときにはそんなこと、意識もしなかった。一瞬も永遠も同じだと言えば同じか、と思わされる。観覧車が倒れ多数に死者を出すという大惨事を背景にして、その時、死神と出逢った人たちの物語を綴るアンソロジーだ。

前作では、死神は主人公が死ぬまでの人生と付き合ったが、今回は死ぬ瞬間だけで、終わる。走馬灯のようにそれまでの人生をよみがえらせるなんて、脳内で自分で勝手に出来ることだ。でも、その瞬間をどこまでも引き延ばせれる。この瞬間行きたいところに行ける。過去にでも、未来にでも。彼は最初、今の自宅に意識を飛ばす。何年も(確か、6年振りだ!)会ってない母親に逢いたい、と願う。大好きな妹とも。だが、彼は出て行った時と同じように、母親に拒絶される。そこから始まる壮大なドラマは結局彼の人生すべてを描くこととなる。死んだ後の、未来も含めてだ。

 なぜ、母親は彼をここまで拒絶したのか。それは彼の思い違いでしかないのか。そこにわりやすい説明を用意するわけではない。もっと曖昧なものを提示する。戒田さんはこのシリーズでは、常に単純なストーリーラインを用意した。だが、それは観客に安心を与えるためではない。その先に見えないものをぶら下げることを忘れない。母と息子の確執を曖昧にすることで、普遍性に到達する。それはかなり微妙な問題なのだが、敢えてそういうふうにする。

タイトルにあるように今回のテーマは「うた」だ。彼女の歌う歌が全編をリードする。だからこの作品のヒロインは西原希蓉美だ。変わらない。彼女の歌に導かれるお話として綴られている。一瞬の永遠は前作と同じだ。今回も快調だ。この調子で5作品最後まで、走って欲しい。

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1 コメント

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Unknown (観劇人間K)
2015-03-09 12:32:49
8日11時から観劇。満月動物園さんはash melodyに続いて2度目の観劇。ここは照明が美しい舞台ですよね。死神シリーズ以外はわかりにくいストーリーなんですか?ash melodyは当時観劇を始めたばかりであまりピンと来なかったんです。今観たらまた違うと思いますが。
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