ザ・九条のオーナーである林田鉄による私小説をリーディーング・ドラマとして舞台化した。不慮の事故で亡くなった彼の妻を描いたノンフィクションである。ラストの妻への手紙の部分は林田さん自身が読む。そうすることで彼が彼自身を演じていることになる。
あみゅーずによるリーディングは小説を役者たちのアンサンブルにより見事に立体化する職人芸の域に達しており定評があるのだが、今回は初の長編に挑んでいる。1時間超えは初めての試みだ。しかもダンスとのコラボ(神原ゆかり)で、絡みもある。だが、大丈夫。
今回は特にしっかり伝えるということを旨とする。加害者に対する怒りが表面化していく過程がスリリングだ。感情に流されてしまったり、被害者意識ばかりが前面に出たりすると、本来伝えたかったことにブレが生じる。だから、ここは絶妙なバランスを必要とする。客観的な見せ方に徹する。そういう意味でもこれをリーディング劇にしたのは正解だった。条あけみさんの演出は冷静に見つめることを貫く。林田さん自身も自分の感情を抑えテキストと向き合っていて、よかった。
1つだけ、、、。これはタイトル「逆縁」にもありますとおり亡くなったのは「子(娘)」であり「妻」ではありません。作中で続柄が出ていなかったので、そのようにもとれるのだな、と改めて様々な見方があることを感じました。