あの傑作小説の映画化である。待望の1作だが、正直言うと、がっかりした。不安がなかったわけではない。だが、古厩智之監督作品である。彼ならきっと大丈夫だ、と高を括っていた。小説の魅力は磯山のストイックと西荻の天真爛漫な性格のぶつかり合いが絶妙な化学変化を呼び起こすところにある。今回キャスティングがばっちりだ、と思った。成海璃子と北乃きいである。大丈夫だ。原作のイメージを損なわない。
なのに、ダメだったのは、長い原作をたった2時間にしてしまったため、原作のディテールが損なわれたことによる。覚悟はしていたが、そのことがここまで映画を損なうこととなろうとは思いもしなかった。ストーリーはちゃんと追いかけている。だが、ダイジェストでしかない。原作の絵解きでしかない。これが一番まずい映画化のパターンではないか。古厩智之なのに、なぜ、こんなことになってしまったのか。
しかも、この映画にとって一番大事な剣道のシーンがなんだかしょぼい。主人公の2人はインターハイレベルの剣の使い手にはとても見えない。だから、原っぱでの果たし合いのシーンがママゴトに見えてしまう。これでは感動できない。
磯山が果てしなく強い少女剣士で、そんな彼女にまとわりつかれた普通の女の子である西萩が、だんだん剣道の魅力にとりつかれていくさまが、はしょり過ぎるからまるで説得力を持たない。これではこの小説の魅力は描けない。これはコミカルなただのスポコンなんかではないのだ。なのに、お話を追うだけの青春スポーツ映画になってしまったから、結果的にはスポコンにすら見えるほどだ。
最初、中学時代に磯山がたった1度、同じ中学生である西萩(その時は旧姓の甲本)に負ける、というシーンがある。あそこから完全にディテールが取り除かれてあるのに驚いた。シンプルにすることは悪くないのだが、あれは磯山のトラウマとさえなる大事なエピソードだし、ここがなければこの話は成立しないのだ。なのにそこをこんなにあっさりと流すって、この映画果たして大丈夫か、と思わされたが、やはりダメだった。
ここまでするのなら、まるで原作とは別ものの映画にして作ってくれたのなら、まだ諦めもついたのだが、ご丁寧にも原作を忠実に見せようと努力しているから、たちが悪い。
もちろん嫌いな映画ではない。どちらかといえば、それでもやはり好きだ。古厩智之監督のよさがちゃんと出ている。きらきらする青春の輝きが確かに描き出されてある。だが、それは『武士道シックスティーン』という題材を生かしたものではない。もしかしたら僕が原作を偏愛するから、ただこの映画に難癖をつけているだけかもしれないが、でも、いくら考えてもこの映画は違う気がする。
なのに、ダメだったのは、長い原作をたった2時間にしてしまったため、原作のディテールが損なわれたことによる。覚悟はしていたが、そのことがここまで映画を損なうこととなろうとは思いもしなかった。ストーリーはちゃんと追いかけている。だが、ダイジェストでしかない。原作の絵解きでしかない。これが一番まずい映画化のパターンではないか。古厩智之なのに、なぜ、こんなことになってしまったのか。
しかも、この映画にとって一番大事な剣道のシーンがなんだかしょぼい。主人公の2人はインターハイレベルの剣の使い手にはとても見えない。だから、原っぱでの果たし合いのシーンがママゴトに見えてしまう。これでは感動できない。
磯山が果てしなく強い少女剣士で、そんな彼女にまとわりつかれた普通の女の子である西萩が、だんだん剣道の魅力にとりつかれていくさまが、はしょり過ぎるからまるで説得力を持たない。これではこの小説の魅力は描けない。これはコミカルなただのスポコンなんかではないのだ。なのに、お話を追うだけの青春スポーツ映画になってしまったから、結果的にはスポコンにすら見えるほどだ。
最初、中学時代に磯山がたった1度、同じ中学生である西萩(その時は旧姓の甲本)に負ける、というシーンがある。あそこから完全にディテールが取り除かれてあるのに驚いた。シンプルにすることは悪くないのだが、あれは磯山のトラウマとさえなる大事なエピソードだし、ここがなければこの話は成立しないのだ。なのにそこをこんなにあっさりと流すって、この映画果たして大丈夫か、と思わされたが、やはりダメだった。
ここまでするのなら、まるで原作とは別ものの映画にして作ってくれたのなら、まだ諦めもついたのだが、ご丁寧にも原作を忠実に見せようと努力しているから、たちが悪い。
もちろん嫌いな映画ではない。どちらかといえば、それでもやはり好きだ。古厩智之監督のよさがちゃんと出ている。きらきらする青春の輝きが確かに描き出されてある。だが、それは『武士道シックスティーン』という題材を生かしたものではない。もしかしたら僕が原作を偏愛するから、ただこの映画に難癖をつけているだけかもしれないが、でも、いくら考えてもこの映画は違う気がする。