是枝映画でなければ、この素材では見ようとは思わない映画だ。あまりに地味すぎる。母と娘の確執を描く。カトリーヌ・ドヌーブとジュリェット・ビノシュが主演しても、そんなフランス映画を見たいとは思わない。
大女優とその娘。『真実』と題された母親の書いた自伝には嘘ばかりが書かれてある。娘はなぜ、本当のことを書かないのか、と詰め寄る。
アメリカで脚本家として活躍する娘が母親の自伝本の出版を機に娘と売れない俳優である夫(イーサン・ホーク)を連れて家族で里帰りするひと夏の物語。フランスのおばあちゃんのところに初めて行く女の子のお話、でもある。おばあちゃんと孫のお話なら、よかったんだけど、それはない。あくまでもこれはビノシュが主演の映画だから。
でも、メインとなるお話があまりにパターンすぎて、つまらない。2人の和解までのお話。今撮影中の映画を劇中劇にして、そこでも母と娘の確執が描かれる。自分のことばかりを優先して、家族のことを蔑ろにした母親。そんな母親の反発する娘。でも、本当は寂しかっただけ。確かにうまい映画だとは思うけど、これではなんだか予定調和すぎてもの足りない。
相変わらず子役が実に上手くて、彼女の目線からこの映画を作ったなら、もっとスリリングで面白い映画になったのではないか。映画の撮影所で子役のこましゃくれた女の子と言葉を交わすシーンがこの映画の白眉。でも、それって映画の本題からはずれている。残念だがこの映画は僕の趣味ではない。