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映画・演劇のレビュー

『恋するリベラーチェ』

2013-10-25 21:37:36 | 映画
宮崎駿に続いて、映画からの引退宣言をしたスティーブン・ソダーバーグ監督の最新作。今年に入ってもう3本目だ。しかもこの数ヶ月のことだ。怒濤の新作ラッシュである。しかも、これは引退後の作品。えっ、と思うけど、そうなのだ。最後の作品という触れ込みだった先日の『サイド・エフェクト』公開からまだ何カ月も経ってない。

 でも、それは僕らをだましているのではなく、これは引退宣言後の第1作だ。要するにこれは日本では劇場公開されるけど、本国ではTV映画、ということらしい。ややこしい。彼自身は、今後は劇場用映画ではなく、TVにフィールドを移し替えるということだ。

それにしても彼のフットワークはとても軽い。それは今までのフイルモグラフィーを見れば一目瞭然のことだが。そして、この作品もまた、とても軽やかだ。CM無しで、2時間というのは、少し長いけど、本国ではどう受け止められたのだろうか。CMを挟んで2時間半くらいで放送されたのだろうか。まぁ、そんなこともどうでもいいけど。

軽やかで見やすい映画なのだが、いささか単調で、途中からだんだん退屈してくる。主役の2人の体を張った(文字どおりの意味だ。凄まじいセックスシーンもある。ふたりの裸満載の映画なので、R15)演技には瞠目させられるが、それでもお話が単純だし、あまり刺激的ではない。スクリーンに集中できないのは、TVを想定した編集だからか。でも、それはいささか勘ぐり過ぎか。

 だが、映像はいささかTV的で表面的な見せ方に見える。時系列に並べられたお話が、淡々としたタッチで綴られていくから、その起伏のなさが眠気を誘う。つまらないわけではないけど、途中からは少しイライラする。正直言うと長い、と思う。

ギンギラで、ど派手なピアニスト、リベラーチェ(マイケル・ダグラス)。彼の自由奔放な生き方には、驚かされるけど、だんだんそれにも飽きてくる。彼に愛されて行動を共にするスコット(マット・デイモン)が、だんだん飽きられていく終盤部分も緊張感が足りない。その前の彼がこの豪邸での囚われの生活に嫌気がさす、という展開をもう少し広げてくれたならよかったのに、そこをおざなりにして、反対に棄てられそうになり戸惑うという話へとシフトするのは、なんかなぁ、だ。

 ゲイであることを隠して、HIVに感染したことも当然隠し続け、死んでいく。彼は、ずっと自分を偽ったまま、生きた。そんな男の生涯を、最後の10年間共に過ごしたスコットとの関係の中から焙り出す。あまりに2人の描写が濃すぎて、反対に彼らの微妙な関係性が描ききれないのが惜しい。



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