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映画・演劇のレビュー

『ディアスポリス  -DIRTY YELLOW BOYS-』

2016-09-13 22:41:38 | 映画

 

これは「この秋、一番の期待作」の1本。(この秋はこれだけではなく、期待作がたくさんある!)熊切和嘉監督によるアクション映画だ。東京の裏都庁、という設定が斬新。それだけでいろんな騒擾力を刺激する。不法滞在の15万人に及ぶ外国人たち。彼らとどう向き合うか。金融庁の関与しない銀行、厚労省の認可しない病院、そこには何でもある。そして、彼らを守る裏警察もちゃんとある。その署長が松田翔太。彼が本編の主人公。警察とは名ばかりで、スタッフは彼と相棒の浜野謙太のふたりだけ、だけど。

 

TVシリーズを先行させての劇場版という最近では定番のスタイル。だが、この設定の面白さは興味津々。いくらでも切り口はある。どう出てくるのか、ドキドキしながら見始めた。だが、しばらくして、なんだ、これは! と言いたくなる。東京から離れてロードムービーの趣きを呈する。それはないわ、と思う。これは東京で暮らす不法滞在の外国人たちの話、のはず。なのに、すぐに、裏都庁に守られる東京の外国人たちの姿を描く映画ではなくなる。そういうのはもうTV版で散々やり尽くしたと、でもいうのか? 

 

東京の狭いエリアにうごめく外国人たちの生活をドキュメントしながら、彼らが絡む犯罪に松田翔太がどう挑むのか。それが見たかったのに、なんだかがっかりだ。しかも、中国人2人組(須賀健太が凄いけど)の犯罪を追って、東京から大阪までオンボロ車で旅するなんていうお話にはなんの緊張感もない。さらには彼らを追うヤクザも、まるでやる気ないような尾行で、プロのヤクザならこんなチンピラに振り回されるわけないだろ、と思う。映画版のサブタイトルにもなっているDIRTY YELLOW BOYSという組織があまりにしょぼくて、映画に広がりを失わせたのが最大の難点だろう。この組織に入る為にお金を稼いでいた先にも書いた2人組の中国人のチンピラが、組織の東京支部に行って、がっかりする。ボスを簡単に殺して全国に散らばる組織を傘下に入れるために東京を離れる。この話で見せると決めた以上そこをちゃんと抑えなくてはいくら細部を頑張っても緊張感は生まれない。組織とは名ばかりのしょぼさが、何を意味するのかもよくわからない。9月の初っ端の映画で躓いた。


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