久々のクロネンバーグ監督作品。なんと8年ぶりとなるらしい。80代になってもう何本も撮れないだろう。これが遺作になるかも知れない。先日見たバリー・レビンソンもそうだった。80年代一世を風靡した彼らが晩年を迎える。最後に何を遺すのか。
最初の1本は『スキャナーズ』。当時『イレーザーヘッド』と2本立で見た。衝撃的だった。もちろん、後者が。でも、クロネンバーグ作品も面白かった。その後、『ビデオドローム』が公開されそこから快進撃が始まる。『戦慄の絆』『クラッシュ』がキャリアの頂点だろうが、『裸のランチ』も好きだ。
だけど、今回の映画は頂けない。これは巨匠がキャリアの最後で好き放題してコケてしまう、というよくあるパターンだろう。クロネンバーグも黒澤明や宮崎駿の轍を踏んだ。バリー・レビンソンも、だ。
ストーリーがない。ただただ無意味にえぐい描写が続くばかりで食傷気味になるし、いきなり終わるし。これはよくわからない、独りよがりの映画だ。108分が苦痛だった。いかにもクロネンバーグが好きそうな設定と展開だから、ファンにはこたえられない映画かもしれない。マニア絶賛、かもしれない。だが、僕はダメだった。クロネンバーグも老いたな、と寂しい気分。
あまりに設定が異常で、あほらしい。手術をショーとして見せるなんていうのもリアリティがないし、嘘くさい。体を切り刻んでも痛みを感じなくなったからといって、自分の体を切り刻むか? 冒頭のプラスチックのゴミ箱を食べる少年の話は衝撃的だった。そんな異常な子供を殺す母親も。なぜこんなことになったのか、というところから話が始まるのかと思ったら、すぐに手術ショーの話になる。こちらが本筋みたいなのだが、こちらはゲテモノでつまらない。臓器にタトゥーとか、内臓セックスとか、グロ満開。いつもながらの変態映画だけど、僕は、なんだかなぁと思う。プラ食い少年の映画が見たかった。