こういう大人向けの恋愛小説は苦手だから普段は読まない。渡辺淳一とか読んだこともない。(森田芳光の『失楽園』は見たけど)
だけど最近あまりに同じ傾向の本ばかりが続いたので、少し反省して手にした。秋が終わるからその名残りになるかなとも思い読み始めた。昔、子どもの頃なぜが立原正秋を読んでいたことがある。『冬の旅』に心惹かれた。たぶんTVドラマ化されたものを見たことがきっかけであろう。それから少し背伸びして読んだ。そんなことを思い出しながらの今回の読書である。
『立秋』だから立原正秋を思い出したわけではないけど、改めて見るとそこからの連想はありだなって思う。
ふたりの男女の歳月が描かれる。大人の恋の話だけど、こんな感じは僕は無理。理解したいとは思わない。中学生の頃課題図書で読まされた川端康成の『雪国』を思い出す。あんなものを中学生に読まれるなんて、あんまりだと今でも思う。これだって同じ。大人になった今でも受け付けない。
出会いは漆器。彼女の作品に惹かれて,信州塩尻の彼女の店を訪ねてきた。そこから始まる大人の恋。彼には妻も子もいる。彼女の仕事へのリスペクトから始まった関係はお互いの今ある現実を第一にした上での関係である。深入りはしない。年に数回会う。あるいは数年に一度。滞在中は毎日。信州と東京をつなぐ10数年にわたる恋。
悪い小説ではないし、こんな関係が心地よいという人もいるかもしれないが、なんだかなぁと思う。60台になったとしてもこういうのはあまり好きに慣れない。