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映画・演劇のレビュー

櫛木理宇『世界が赤に染まる日に』

2016-09-12 06:34:40 | その他

 

 初めての作家を読むのは楽しみでもあり、不安でもある。こういうタイプの作品は特に。ホラータッチの中間小説なら、もう途中で辞めるけど、作者は『ホーンテッド・キャンパス』というシリーズ(どんな作品か、もちろん知らないけど、タイトルからは想像が出来る)を書いた人で、というのを、巻末の紹介で見て、あまり期待はしなかったけど。

 

つまらなくはなかった。惜しい。題材的にはかなり面白い。けど、描き方が中途半端だ。主人公二人の造形も悪くはないけど、あまりに類型的になりすぎた。描かれる特殊な環境や状況を納得させるためには、彼らの内面や個性をどれだけ際立たせるかがポイントとなる。説得力や、惹きつけるリアリティは必須だ。そこが類型では作品にのめり込めない。

 

所詮作りごとか、と思ってしまう。小説が作りごとであるのは、誰もが知っている。でも、そこには事実を超えるリアルがある、ということも知っているから、僕らはそれを読むのだ。

 

いじめで廃人状態にされた従兄弟の復讐をするため、犯人だけでなく、同じような犯罪を起こしたやつらに、同じ目を味あわせる。そして、最後は犯人を罰する。世の中の理不尽を正す。ふたりの少年が始めた凄惨な狩り。クラスメートだったが、それまで話したこともなかった彼らが公園で偶然出会い、まるで接点がないはずのふたりが共に行動し、のうのうと暮らす犯罪者たちに同じくらいの痛い目を与える。少年犯罪は復讐では解決しないなんていう綺麗事を言わさない。

 

これをエンタメでやられると、勧善懲悪の爽快感が残る作品になるのかもしれないが、リアルの地平でするから凄惨な惨劇の繰り返しになる。残酷な処刑シーンはあまり描かれないけど、その行為が彼らに与えた影響や、世の中がそんな彼らの行為をどう受け止めるかも描かれない。あまりに単純で少し拍子抜けする。彼らふたりの視点からだけで、大人は描かれない。設定のムリムリ度も高い。


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