昨日、武田操美さんの『孤独死』を扱った芝居(マシュマロテント『蛇含草ホテル』)を見た直後の今朝から読み始めた本である。これは同じように『孤独死』を扱った毎日新聞記者によるノンフィクションである。もちろんこのタイミングで読んだのはたまたまである。
それにしてもまさかのタイミングである。こんなことは僕には日常茶飯事だ。いろんなことが偶然によって連鎖する。
前半部分はかなり面白い。まるで良質なミステリー小説を読んでいる感じ。この先どうなっていくのか、期待した。だけどだんだん行き詰まってくる。事件の核心には届かない。というか、これは事件ではない。身寄りのない孤独死の現場でしかない。そこには物語はなく、現実しかない。ひとりで死んでしまった老婆の姿。
3400万円を残して死んだ千津子さんとは何者だったのか。結局よくわからないまま取材は終わる。ドラマじゃないからドラマチックな展開にはならない。読み終えてそこにはなんだかよくわからない疲労しか残らなかった。僕はきっと物語を読みたかったのだろう。それはそこに隠された彼女のドラマだ。だが取材からはそこには届かない。仕方ないことだ。これは小説ではなくノンフィクション作家によるものでもない。取材した記録でしかないから。