これは東映の新プロジェクト「TOEI VIDEO NEW CINEMA FACTORY」第1回作品らしい。ということは、先に公開された『神回』は第2回作品なのか。(まぁ、いいけど)調べたら2本とも第1回制作作品でした。まぁそうでしょね。
面白い発想の台本を低予算で新人に監督デビューさせるというこの企画は凄くいいと思う。2本とも今までありそうでなかった作品だった。狙い通りの映画が出来上がった。ただ売り方はどうだろうか。残念だがこれでは誰も見に行けない。せっかくチャーミングな映画を作ったんだから、本来のターゲットである中高生が見たいと思う宣伝とマーケット公開をして欲しい。
さて映画である。地方の農業高校が舞台になる「学園もの」という体をなす。先生に恋する女子高生とか、表面的には彼女たち4人組(と、いってもほとんど3人、いや、ふたり、いやいや1人かも)の青春もの映画、なのだが。彼女たちの日常をしっかり見せるのがいい。甘いだけの青春映画ではない。農業高校の少女たちの日々を丁寧に描く。
そして、やがてまさかの展開になる。それは彼女が暴走する後半戦のことだ。先生に猛烈アタックをかけていくところである。最初はかわいいで済ませていられるが、徐々にエスカレートする。梅酒をガブ飲みして、宿直中の先生のところに押し掛けるところ。さらには振られた後。あのさらなる先生のまさか。
そしてダメ出しは彼女のストーカーをする男子に駆け落ちを迫るところ、へと。もう怒濤の展開だが、ギリギリで踏み止まるというのは見事。
そしてラストはちゃんともとの日常に戻り農業高校ならではの展開になる。牛と豚のそれぞれのエピソードで締める。ニワトリのエピソードも含めて、育てて絞めるまでをしっかり見せる。綺麗ごとに終わらせない。監督、脚本は北村美幸。チラシには「オールドルーキー」なんて失礼な書き方がされていたが、とても危うく瑞々しい映画で感心した。(北村監督は男性で、もう60歳になるらしい)
たった96分とコンパクトにまとめたのもいい。無駄がないし、勢いよく展開する。しかも暴走するし、それをきちんと収めるバランスのよさもある。見事。