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映画・演劇のレビュー

柚木麻子『ランチのアッコちゃん』

2013-08-19 23:08:36 | その他
 とても幸せな気分になれる。4話からなる連作なのだが、どの話も、なんだか困った女の子が主人公である。

 だが、三智子が主人公で、それをアッコちゃんが助ける話。というわけではない。最初の2話はそういう話だったのに、後半2話はアッコちゃんと三智子の話ではないのだ。このバランスの悪さ。ネタが尽きたのかな。でも、後半の2つの話も悪くはない。退屈なOLになった主人公とかつての高校の先生が、不良少女を追って夜の街を走り抜ける話。クビになったOLが、会社のあるビルの屋上にビアガーデンを作る話。

 でも、やはり前半の2作が素晴らしすぎた。1週間アッコちゃんのランチを体験する。1週間アッコちゃんの仕事を手伝う。それだけでいろんなことが見えてきて元気になる。今まで毎日憂鬱で、無気力だったのに、1週間の新鮮な出来事が彼女を変える。ある種のパターンであることは否めない。だが、この定型がなんとも心地よいのだ。

 今週は、萩原浩の『家族写真』と、越谷オサム『陽だまりの彼女』も読んだ。

 前者は読みやすい短編集。もちろん家族がテーマ。7編の中で「磯野波平を探して」が一番面白く読めた。波平が54歳だとは知らなかった。今の僕と同世代になる。やばい。主人公は53歳。僕と同じ。もう若くはないけど、老人でもない。でも、最近老人の方が近いのでは、と思い始めてきつつある。やばい。そんな自分を肯定してもいいのではないか、と思う。そんな気分が描かれる。この年になるとやはり、こういうのに、感情移入するのかぁ。

 26歳が主人公の『陽だまりの彼女』は、さすがに感情移入して読めるほど、若くはない。でも、楽しめる。あのファンタジーのオチには驚くが、そこも悪くはない。今、ラブストーリーの名手である三木孝浩監督がこれを映画化しているけど、どんな作品に仕上がったのか、楽しみだ。(公開は10月)小説の方は、暇つぶしにちょうどいい感じ。(実は、クラブの試合会場で、待ち時間に読む本がなくなり、生徒から借りて読んだ。1日で読むため、けっこう焦った。)



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