習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『エンドレス・ポエトリー』

2018-12-27 21:09:44 | 映画

アレハンドロ・ホドロフスキー監督の新作。前作『リアリティのダンス』の続編。自伝的なドラマというより、もう自伝そのもの。本人も出てきて、当時の自分と対峙する。

青年期に達したアレハンドロが描かれる。シュールな描き方で、作品世界に引き込む。だけど、それがどんな意図からの描写なのかはよくわからない。自由奔放で、好き放題しているだけに見える。でも、そうすることで、自分の中では何らかの意図があるのだろう。僕たちがわからないだけ。でも、そのイマジネーション世界には圧倒される。88歳にして、よくぞまぁ、こんなにも自由自在に映画を作れたものだ。

チリからパリへと旅立つまでが描かれる。10代の時間。両親との関係や、詩人の仲間との語らい、恋や友情という青春映画なら定番のお話が描かれていくのだけど、描き方が大胆すぎて、なんじゃこれは、と思うシーンも多々ある。だけど、まるで動じない。ホドロフスキーは奇をてらうのではなく確信犯的にこれでなくてはならないという感じで見せていく。その有無を言わせぬ姿はボケてきた老人だから、と言わせぬ。大体ボケ老人に映画は作れないだろうし。

甘い青春回顧映画とはまるで違うけど、でも、このほろ苦さは普遍的な青春像でもある。ラストで父親との和解が描かれるのだが、現実ではそうはいかなかっただろう。ホドロフスキーが映画のふたりに抱擁をさせる。こうあるべきだという、今の彼の想いがそこにはあるのだろう。自分の過去、その事実を再現するのではなく、今の自分の中にあるイマジネーションを、その溢れる想いをここに再現したのだ。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『馬を放つ』 | トップ | 『笑う故郷』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。