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映画・演劇のレビュー

ステージタイガー『協走組曲 第3楽章』

2012-07-13 23:23:50 | 演劇
 序章、第2章に続く第3楽章なのだが、これはあくまでも続編ではない。先日のリンクス04で上演された20分ほどの短編が、第2章なのだが、今回は、あれのロングヴァージョンであり、完全版であるはずだ。だが、実はそうでもない。

 上演時間1時間という長さが、今回の作品の尺である。これは通常の芝居としては異例の上演時間ではないか。これは大河ドラマであるはずの内容だ。にも拘わらずこの上演時間に収める。盛りだくさんのエピソードではなく、話の骨格だけしっかり作り、一気に見せる。ステージタイガーは数年前につかの『リング・リング・リング』に挑戦したが、今回の作品も、つかこうへいの芝居に似ている。理屈ではなく感情が先走る。父と娘の愛憎劇だ。走ることを通して憎んでいた父と和解していく。

 作品は3部作ではなく、アプローチを変えた変奏曲というスタイルを取る。こんな構成の芝居は普通ない。これは「協走組曲プロジェクト」とでも呼ぶべき企画だ。事故により目が見えなくなったランナーが、それでも走ることを諦めないで、フルマラソンに挑戦する姿を描く。単純な筋立てだが、その単純さが力になっている。イメージからスタートして、そのイメージを幾重にも自由に展開させて見せる。

 たすきを手にして、それでつながる父と娘。たった50センチ先にお互いがいる。そして同じようの走っている。盲目のランナーを先導して2人3脚で走る。全編足を止めることなく走り続ける芝居は昔ランニングシアターダッシュが、やったが、ステージタイガーは、それの2番煎じではない。これは、ドラマではなく、心象風景なのだ。勝ち負けの話でもない。最後の大阪マラソンのシーンも、彼女が勝つかどうかでもなく、完走できたかどうかですらなく、ボロボロになりながらも、走る姿を見せるにとどめる。その息遣い、たすきで結ばれた父と娘の絆、それだけでいい。

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