今年一番の期待作だ。だから公開初日に見てきた。冒頭からガンガン飛ばす。凄い緊張感の連続だ。圧倒される。そういう意味でもこれは原田眞人監督らしい映画なのだ。確かにテンポよくどんどん話が突き進んでいく。だが、凄いのはその速さだけではない。細部まで目が行き届いていて、これでこそ、映画だと思わされる圧倒的な情報量。スクリーンから一瞬も目が離せない。
教官の木村拓哉の登場シーンから一気にこのお話の世界に引き込まれる。一瞬で3年後、本題へと突き進む。事件が発覚して、取り調べのシーンが続く。容疑者を演じた男(酒向芳)がとんでもないモンスターで初めて見る役者だけど、こんな人がいたのか、と驚かされる。予告編でも異彩を放っていたけど、そのルックスだけでも凄い。相対する二宮和也のテンションの高い芝居も凄い。このふたりの一騎打ちには圧倒される。
そんなふうにした映画が始まって7割くらいまで、このドキドキが持続する。しかし、終盤、木村拓哉が暴走し始めるところから、映画は一気に減速する。お話の先も見えきってしまう。彼の「正義」の行方が見えた時、映画はつまらなくなる。
犯人捜しの映画ではないことは最初からわかっているし、ネタバレは早い時点でするのも承知の上だ。ポイントはそこではない。この国の未来を憂う。何とかしなくてはならないと、考える。そして実行する。その展開自体は悪くないだろう。だが、そこから話が一気にすぼんでいってしまうのはどうだか。
せっかくここまで緊張感のある映画を作ったのだから、最後までそれを持続させて欲しかった。この世界がつまらないクズの政治家たちに牛耳られている、そこをただすためにどうするのか、という核心部分が曖昧なまま、終わるのがもどかしい。