石井裕也監督2018年作品。こんな映画があるなんて知らなかった。たまたま飛行機の中で見たのだが、拾い物。メーテレで作った小さな映画だが、描きたいことが明確。もともとはTVドラマとして作った後、完全版を劇場で公開したみたいだ。
主人公である妻夫木聡(亡くなった2歳児の父親であり、事件を追う新聞記者)の持って行き場のない怒りが、さまざまな人たちにぶつけられるさまを丁寧に追っていく。
原因はひとつに集約は出来ない。たまたま不幸が重なって、最悪の災厄に至った。誰が悪いわけでもないから、怒りを持っていけない。強いて言えば、犬の糞の始末をしない老人が元凶なのだが、彼が殺人犯というわけじゃないから。
街路樹の検査を請け負った業者、市役所の職員、救急外来を拒否した病院の医師。不幸が重なっただけ。彼らは加害者ではなく、ある意味では被害者かもしれない。
事故は偶然だが、防ぐことはできた。みんなわかっているけど、認めたくない。自分のせいにするのは、心外だ。もちろん自責の念はある。井上真央の妻の側面は敢えてほとんど描かず、夫の側だけを描いたのがいい。視点を限定することで痛みがストレートに伝わる。
たまたまだけど、こんないい映画が見られてラッキーだった。(アナウンスで何度も中断されたが)今回の旅は(台湾10日間)幸先のいいスタートを切った。