こういう現代劇で、しかも「恋愛もの」を神原さんが書くなんて、めったにないことだろう。でも、作品自体は決して異色ではない。それどころか、いつもの神原ワールドで、原っぱも出てくるし、小さなコミュニティーでのお話で、(さすがに長屋ではなく商店街だけど)善意の人たちがいて、でも、そこで諍いが生じて、ちゃんと(?)人が死んでいく。
心を病んだ男が主人公で、寂しさと甘えから,妻ではなく、誰か他のひとに心惹かれて、ここではない場所に安らぎを抱いてしまう。単純に言うと、どこにでもある「不倫もの」なのだけど、それがああいう形の自殺へとつながっていくのがなんとも神原さんらしい。極端から極端へと舵を切る。
まぁ、わがままの極みのようなお話で、ストーリー自体にはあまりリアリティはない。だけど、作品全体が神原ワールドのファンタジーなので、これはそういうものなのだ、と思って見ていると、それはそれで納得がいく。お話としてのリアルよりも、彼らの気持ちを、感情をどんどん全面へと押し出す、というところが神原さんらしい。
今回コメディリリーフをになう庄司勝と白峰絹子(中学からの幼なじみで、ライバル同志、という関係。障害を持つ男と同じレベルでちゃんと関わる、というふたりの関係性がおもしろい)も含めて、いつものメンバーが適材適所に配置され、それぞれがしっかりと役割を全うしているのもいい。