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映画・演劇のレビュー

中村航『夏休み』、石田衣良の『1ポンドの悲しみ』

2013-09-17 22:17:12 | その他
 ナチイチ・シリーズである。文庫本は持ち運びが便利なので、癖になる。しかも特製ブックカバーがなかなか持ちがいいから、やめられない。実はもうこの小説に続いて、石田衣良の『1ポンドの悲しみ』という恋愛短編集も読んだ。

 この2冊を読みながら、もうしばらくは恋愛小説はいいな、と思った。おなかいっぱいだ。しかも、自分がもう恋愛なんかとは縁のない人生を送っているから、共感できないのもきつい。いや、問題はそういうことではなく、これらの小説があまりおもしろくない、ことだろう。つまらないわけではなし、実はとてもよく出来ているから、共感する人はたくさんいるはずだ。『100回泣くこと』が映画化され、人気の中村航作品は、悪くはない。2組のカップルの夏休みを背景にして、とてもチャーミングな恋物語を見せてくれる。夏の終わりにふさわしい小説だ。カバーのイラストもかわいい。まるで、ジュニア小説のようなカバーで、手に取るのが恥ずかしかった。

 妻の母親と同居する若い夫婦の話だと、思い読み始めたら、あまり母親とのことは描かれず、彼女の親友夫婦との話へとシフトしていき、それはそれで悪くはないけど、ゲームで、離婚をかけて勝負するとか、とんでもない話になる。なんだか読んでいて、物足りない。

 その後、石田衣良の『1ポンドの悲しみ』になるのだが、10編の恋愛物語は、なんだか微笑ましくよく書けているし、悪くはないのだが、恋愛の喜びとか、生きていることの愛おしさとかが、普遍的なレベルにまでは至らないから、ただのよく出来たお話でしかない。心に沁みてこない。とか、言いながら結構泣きそうになったのだが。要するに小説の中の男女が羨ましいだけなのかもしれない。

 この年になって、別に今更恋愛がしたい、とは思わないけど、ときめきは欲しいかも、なんて思いつつ、本を閉じる。

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