オリゴの短編集はとても面白い。長編では描けない不思議な世界を提示してくれるからだ。切れ味の鋭さが岩橋さんの持ち味で、それが遺憾なく発揮されると凄いものが見られるはず。と、今回も楽しみにして見に行く。
だが、期待は裏切られることになるから、面白い。なんと、これは「短編集」と銘打たれてあるにもかかわらず、長編スタイルの作品に仕上げてあるのだ。要するに短編連作ということ。3本の短編は独立しつつも共鳴し合い、2時間の長編を形作る。短編読み切りの切れ味の鋭さを期待したから、ガッカリする。
でも、きっと、そんなふうに言うと岩橋くんは、してやったり、と思うのではないか。(だから、終わった後で、そんなことは言わなかった)上手く期待を裏切るのが彼の常套手段でそれは時々空回りもするけど、今回も微妙なところでなんとか乗り切っていたのではないか。
不思議な話でちゃんとしたオチがない。だから不安にさせられる。今回は「妖精」が主人公。ある物件。事故物件というわけではないけど、不動産会社はここを貸したくない。ここにはなんと妖精が住んでいるからだ。そんなバカな安物のファンタジーで3本の芝居を作る。(インターミッションのエピソードも含めると4本)だからこれファンタジーなんで、というと何をしても許されるという設定はあまり面白くないけど、そういうハンディーを敢えて抱えたまま、3本を見せていく。すべて2人芝居の会話劇。当然派手さはなく地味なお話。それで1本30から40分くらい。かなりの力量がいる。お話の仕掛けで見せるわけでもない。SF的設定も用意されるけどさらっとした描写に終始する。2時間の長さがギリギリだろう。わかっている。集中を持続させる限界まで観客を追い込む。見終えた後、ポカンとした顔にさせられる。してやったり、と岩橋氏は思う。