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映画・演劇のレビュー

ショウダウン『錆色の瞳、黄金の海』

2014-05-30 21:08:54 | 演劇
 今回のショウダウンは林遊民の一人芝居ではなく、久々に役者が4人も登場する。だが、ひとりで演じることも、2人芝居も、今回のように4人芝居になってもまるで何も変わらない。林遊民は今回は基本的には主人公のミルキだけを演じるが、他の役者たちはさまざまな役を入れ替わり立ち替わり演じることになる。要するに、いつもならそれは、遊民がひとりでしていることだ。別に彼女が楽をしているわけではない。ほとんど、彼女の一人芝居である(という、印象を受ける)ことは、変わりない。

 お話は、というか、お話も、と言うほうがいいのだが、今回も変わりない。少年と巨人ゴーレムとの友情物語だ。(だが、芝居に巨人自身は登場しない。というか、登場しているのだが、誰かがそれを演じているわけではないということだ。ミルキの視点からそれは描かれる。)良質のファンタジーとして見事に成立している。いつも思うことだが、まるで宮崎駿のファンタジー映画を見ているような心地よさだ。この小さくて壮大なロマンの世界に酔う。

 今回もまた、ストーリーをどうこう言う必要はない。見ていて元気になれる。胸が熱くなる。ショウダウンの芝居の林遊民は、どうして、こんなにもかっこいいのだろうか。(残念だが、何本か見た客演での彼女の芝居では、全く彼女の魅力が生かされていない。というか、彼女はセンターでしか輝かないタイプの役者なのだ!)

 ホームである船場サザンシアターの特質を十二分に生かして、4人芝居なのに、いつもの一人芝居のテイストを表現する。ナツメさんは林遊民の肉体を通過することによって生まれるドラマ、というスタイルを持ち味にする。彼らの2人3脚で、劇団としてこのドラマが作られる。ここでは彼女自身が劇団であり、作品なのだ。ヒーロー物の鉄則は、すべてが、主人公の目で描かれ、そこに感情移入することで、ドラマに集中する、というところにある。当然この作品もその轍を踏まえる。劇場の狭さや不自由さが、反対に作品の大きさを体現する。いろんな意味で自由自在だ。

 これは単純なお話だ。だから、今回は上演時間が90分ほどだ。だが、それなのに、それは壮大なスケールのドラマで、ボリュームたっぷりの2時間以上の大作を見た気分にさせられる。なんだか、便利でお得。短いインターバルで続々と新作を上演していく彼らは、8月の次回作で東京公演もこなすようだ。次回は再び林遊民一人芝居。今から楽しみでしかたない。

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