なんとそっけないタイトル。1時間18分という上映時間の短さ。これはいったいどんな映画なのか、と気になった。それにいろんな映画祭で賞を取っているみたいで、もしかしたら隠れた傑作か、と少し期待も。解説には「予算もなく、プロではない俳優を使って5年かけて作られた作品。数々の賞を受賞したイギリスのインディペンデント映画」とある。監督はスティーブ・コンウェイ。もちろんどこの誰とも知れない。
アマゾンで配信されていたこのとても地味な映画を見た。5年の歳月をかけてようやく完成した自主製作によるインディーズ映画はとんがった実験映画ではない。ある男の日常を描くただの日々のスケッチ。ルックス通り映画は地味で、説明不足で、何も出来事はなく、何をしたいのやら、それすらよくわからない映画だ。これだけの情熱を傾けて作る意義が感じられない。作者の意図が見えてこない。40分くらい見て、途中眠くなり、うつらうつらしながら見ていたので、これでは時間の無駄だと思い、見続けるのは(一瞬)やめようかとも思う。でも、せっかく見始めたし、結末が気になるから、そのまま見続けることにした。だって、あと残り40分ほどである。
最後まで見て驚く。あの終わり方は一体何だったのか。唐突にも程がある。包丁を出したところで終わる。久々の離婚した妻との再会。子供と会いたいと思っていた。子供を連れてくる約束だった。なのに、彼女はひとりだった。それで・・・ 事前に包丁は用意していた、ということは子供も巻き添えにするつもりだったのか?
電気工事士としての仕事の日々がダラダラと描かれる。真面目な彼は黙々と働くけど、周囲の同僚たちはとてもいいかげんで、まともに働く気がない。でも、彼は同僚たちを非難しない。周囲には興味がないだけ。何を描こうとしているのかが、どれだけ見てもわからない。作り手の意図が見えない不安を抱きつつ、この独特なタッチの映画を見続ける。冒頭のかなり長い主人公の顔のアップ。(最後と符合する)そこにどんな意味を込めたか。延々と続く仕事中の仲間たちのどうでもいいようなヨタ話。彼はそれに加わらないけど、僕たち観客はそれをずっと聞かされる。もしかしたら、そこに意味があるのか、と気になるから、考える。でも、なんの意味もない。なんだったのだ、あれは。
彼はアスベストの犠牲者で、その病気が発覚するところから、少しドラマチックにはなるけど、それでも映画はやはりそっけなく、まるで何の主張もしない。なんなんだ、これは、と思うだけ。答えはない。離婚の原因、仕事仲間でもある妻の兄とのやりとり。停滞するばかりのお話が少しだけ進み、先にも書いたようなところで、いきなりラストを迎える。憂鬱と倦怠。突然の破局。そんな映画に途方に暮れる。説明は嫌いだけど、ここまでわからないのも嫌い。突き放されたような気分。最近(ここ数日だけど)こういう映画ばかり見ている。