三世代の女たちが3人で、一緒に暮らすことになる。父が亡くなってひとりになった母が認知症になる。自分もずっと前にだが、夫を亡くしている。だから娘とふたり暮らしだった。そんな彼女が母を引き取り、女3人の新生活を始める。父が懇意にしていた指圧師が彼女たちの家に頻繁にやってくる。母も娘もその男を受け入れるが、彼女は胡散臭いと思う。だが気がつくと彼はどんどん彼女たちの生活に関わってくる。
何かが壊れていく予感。ひたひたと迫り来る終末。だがそれが何なのかはわからない。じわじわと真綿で首を絞められていくように。苦しくて堪らない。だがそれは快感でもある。自分が何を求めているのか、求めないのか、それすら定かではない。小磯さんは善意から彼女たちに関わるようだ。だけど、不快。悪いことが起きる気がする。読んでいる僕もそう思う。よくないことが起きる。だが、いつまで経ってもそれは明確にはならない。250ページほどの小説のほぼラストに至っても。
もしかしたら、このまま終わるのでは、という予感が押し寄せる。母親の突然の死。彼女はその最期を看取る。小磯さんはもっと早く伝えて欲しかったと言う。
母は亡くなり、娘は家を出る。ひとりになる。生きていくためには何が必要か。家族、友人、仕事、生きがい。主人公の佐知は孤独になる。小磯さんは一緒に暮らそうと言う。もちろん結婚して欲しいとかではない。彼には下心のようなものはない。だがそれを無垢の善意だとは思うわけはない。胡散臭さは相変わらず拭うことはできない。
タイトルの『くたかけ』は、鶏のこと。腐鶏とも書く。彼女たちが庭で育てる3匹の鶏。雛から育てて、たくさんの卵を産む。最後は絞めて食べる。まるでホラー小説のような不気味さに彩られる。