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映画・演劇のレビュー

缶々の階『だから君はここにいるのか【舞台編】リニューアルver.』

2023-05-24 11:43:00 | 演劇

昨年の6月に上演された【舞台編】をさらに進化して再演する。これは来週からの「東京ツアー」に向けた試演会だ。東京では今年1月に上演した【客席編】と合わせて上演される。

今回の芸術創造館の空間を生かしての公演はとても新鮮だった。この芝居は既に何度となく見ているが毎回初めてのように思える。空間の数だけこの芝居があるからだ。そして役者の数だけ、ね。今回新たに田宮ヨシノリを新キャストとして迎えた。相方の「舞台の妖精」(そんな感じの劇場霊)は今回も三田村啓示。
 
芝居の仕込みが始まる直前。舞台美術搬入前の劇場。まだ何もない舞台の上でふたりの男が出会う。彼らは明日からこの劇場で上演される芝居の主役のはずだった台本から削除された男(台本の中にしか存在しない架空の存在)と、その役を演じるはずだった男(現実の生身の役者)。出会うはずのないふたり。
 
これはたった45分の短い芝居なのだが、この一瞬の夢のような時間がいい。こんなにも不思議で豊かな芝居はない。今まではそんなふうには考えなかったから気づかなかったが、これはある種のファンタジーだなと思う。台本に書かれた人物と彼を演じる人物が舞台の上で出会うのだから。同一人物なのにまるで似ていないふたり。今回は身長差もあり、その姿は当然まるで別人ということが強調される。
 
デコボコ・コンビのそんなふたりが自分たちは何なのかを考える。作、演出の久野さんは、そんなふたりの関係を真面目な話として語られるから、一見するとこれは観念的で難しい、なんだか不条理劇みたいだけど、実は演出次第ではコメディにもなる。これはそんないろんな可能性を秘めた作品なのだと今回の作品を見て再認識した。
 
東京では2本がセットにされて同時上演される。そんな贅沢なヴァージョンらしい。せんがわ劇場を舞台にして、また新しいこの作品が生まれる。ぜひそちらも見てみたい。(今回は無理だけど)
 

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