これはまさかの感動大作だ。ラストの怒濤の展開には涙が止まらない。自分たちは死ぬけど、あの子だけは未来に届けたい。彼女はふたりの未来の娘だから。たとえ彼女が両親(自分たちだ)と別れてひとりになるとしても。少女はふたりと一緒にいたいから、現実に戻りたくない。引き裂かれる互いの想い。3人3様の想いを抱えて、たどり着いた結末が美しい。
14歳のまま閉ざされた時間を生きるふたり。ひとりになっても未来に向けて生きて欲しいという願いを引き受けるひとり。少女の初恋はやがて彼女の父親になる人だった。これは岡田麿里監督の第2作。まさかの大傑作。
工場の爆発から時間が止まってしまった町で永遠に同じ一日を繰り返す人々。14歳のまま生きる少年と少女。だが、そこにはただひとり、なぜか普通に成長する少女がいる。この3人を中心にして、学校のクラスメートや町の人々のそれぞれの想いが描かれる。なぜこんなことになったのかを描くのではなく、こうなってしまった事実を描く。理由はどうあれ、現実はここにある。彼らはここで今を生きている。
夏祭りの夜。神隠しに遭った5歳の娘。憔悴する両親。未来を見てしまうこと。14歳のふたりにとっては辛いことだ。未来を知るのは残酷なことだ。ひび割れから見える未来に衝撃を受ける。少年はその知ってしまった未来のために、戦う。大切なことを守る。大切な人を守る。
好きだった女の子が将来自分の妻になっている未来は幸せではない。未来が見えてしまったこと。だが、ここには未来どころか、明日すらない。そんな世界で彼らは退屈凌ぎをしながら、仕方なく毎日を生きている。
アニメーション映画だからこそ描くことが可能な世界が展開する。実写ならへんに生々しくて嘘になる。このリアルさはアニメだから可能なのだ。終わった世界でひっそりと生きること。ここにはもう希望はない。だからこそ希望を捨てない。未来へ。