①『キングコング 髑髏島の巨神』
ラストでゴジラやキングギドラが出てくるんだけど、もともと、これはそういう映画なのだ。髑髏島というより怪獣アイランド。昔の東宝チャンピオン祭りのゴジラ物の世界をリニューアルした異口同音の怪獣バトルなのだ。危険がいっぱいのサバイバル、いろんな怪獣がどんどこ登場。クモンガがなかなか凄かった。でも、なんか暢気。最初から最後までアクションバトルのオンパレード。逃げ惑う人間たち。ハラハラドキドキのはずなのに、しかも派手な映画なのに、だんだんその単調さから眠くなる。つまらない映画ではないし、昔の子供時代に戻って無邪気に楽しめばいいんだけど、なんだかなぁ、と思う。
②『わたしは、ダニエル・ブレイク』
ケン・ローチの新作。引退を撤回して挑む怒りの一撃。でも、これで2度目のパルムドールを受賞したなんて驚く。こんなにも地味で、特別なことは何もない映画なのに。ひとりの男が生きるすべを失い、それでも静かに生きていく姿を淡々と追いながら、さらに追い詰められていく姿が描かれる。この世界は強い者を守り、弱者をさらに痛めつけるように作られてある。自分のことだってままならないのに、幼い二人の子供を抱えるシングルマザーを助けようとして奮闘する。怒りを静かに抑えて、彼らがぶつかる現実をありなままに見せていく。声高ではないのがいい。とてもいい映画だ。だけど、インパクトは弱い。
③『哭声 コクソン』
あのラストは納得しない。オカルト映画ではないんだから。もっとリアルに作って欲しかった。ここまでのナ・ホンジンの2作品は、凄いと思ったけど、今回は渾身の力作なのに、なんだかなぁ、と思う。最初の國村隼の姿は緊張感があってよかった。ここから何が始まるのだろうか、と期待させる。だが、事件が起こり、犯人捜しが始まったところから、だんだんズレてくる。怪しい男、不思議な出来事、なんだか横溝正史っぽい展開で驚く。おどろおどろしい世界で、それがなんだか嘘くさく思えてきて、しらける。