『第9地区』『エリジウム』に続く第3作。ニール・ブロムカンプ監督は『第9地区』同様に南アフリカ・ヨハネスブルグを舞台に設定しハードなアクション映画にした。ただ、見る前はどうして彼がこんなハートウォーミングを作るのか、と不安だった。だって、このポスターである。(写真参照)お子さま向けの緩い映画だとしか、思えない。しかも、チャッピー、である。
だが、始まると、まるで予想と違うスタートに驚く。『ET』みたいな子供向けのお話ではなかった。心を持ったロボットと人間との心の交流を描く、というストーリーラインは確かに踏んでいるけど、映画自体は前2作の流れを組む過激なアクション映画。今回も南アフリカの危険地帯を舞台にした近未来(2016年って!)の犯罪劇。
冒頭は完全に『ロボコップ』の世界だ。ロボット警官が盾になり、犯罪と向き合う。エイリアン、機械装備の人間、今回はロボット。仕掛けが違うけど、お話は同じ。だが、今回は先にも書いたように、心を持ったロボットが人間とのふれあいから、成長していく姿を描くというような、ソフトなお話。描かれる世界と、描こうとするお話との乖離。だが、それがなんだかよくわからないけど、不思議な融合をする。(でも、あまり上手くいってないけど)とてもへんてこな映画になった。
ギャングたちもなんだか、お間抜け。笑わせるわけではないし、アクションが過激でハードなので、そこでも齟齬が生じている。だいたいこのかわいいタイトルからして誤解させる。でも、そこもまた作り手のねらいの範疇で、彼は確信犯なのだ。では、そんなことも含めて、どういう効果を狙うのか、そこがなんだかよくわからない。せめて、もっとちゃんと驚かせて欲しい。すべてにおいて中途半端なんで、まるで納得しない。
チャッピーを作った博士と、チャッピーとの心の交流なんていう定番も、言いわけ程度の中途半端。そんなふうに描かれるだけなので、ちょっと居心地が悪い。(しかも、博士途中で消えるし。なのに、最後には再登場しておいしいところを攫っていくし)お話としては『鉄腕アトム』なのだ。それにしては、全体が少しハードすぎる。このバランスの悪さ。それが作品の力にはならない。まぁ、つまらないわけではないが、なにがなんだか、と思う。やっぱりこれでは、消化不良。