今年3本目の往来公演。前回から2か月での新作上演となる。今回は主人公にアイドルの女の子(内木志)を起用して(というか、この企画はきっと彼女ありき、のものなのだろう)彼女を劇団が支えるという形での上演。内容はいつものパターンの人情喜劇。
網走の場末のスナックを舞台にして、現役アイドルがなぜか引退して、ここで働いている。好きだった男を待ち続けるために。東京を離れて、故郷であるここに戻ってきた。行方不明になった彼はきっとここに戻ってくると信じて。ここで働く仲間やお客さんとの交流を通して彼女がどう成長していくのかが描かれる。一応。
たわいないお話で、先が読める展開で、ベタな話なのだけど、安心して見ていられる。ルーティーンワークなのだけど、往来らしいお話で悪くはない。ただ、内木志のファンはこのお話でよかったのだろうか。もっとさわやかな「青春もの」のほうがよかったのではないか、なんて思いつつ見る。終盤のお話としての仕掛けはいい。ハートウォーミングとしての落としどころはきちんと抑えてある。
恋人を死なせてしまったことで心を失くしてしまった彼女が、彼の死を求めるまでの物語。みんなが暖かく彼女を支えて再生していく、というドラマを往来らしいドタバタ騒動のなかで見せていく。もっとしっとりとした芝居に仕立てたほうがよかった気がするけど、そうすると往来らしくなくなる。だから、このゆるさがいい、ということにしておこう。
ヒロインの内木志はせりふをしゃべるだけで精一杯だけど、そんな一生懸命さがいい。行方不明になった恋人を演じる歌手の小倉悠吾は、ほとんどギターを持って歌うだけ、というのも想定の範囲内だろう。このふたりを往来の芝居の中にはめ込んで作ったという感じだ。