こんなにもハイテンションな芝居はめったにない。最初から最後まで役者たちはずっと叫び続けている。さぞや疲れることだろう。でも、みんな同じように叫び続ける。最初から最後まで。95分間。怒濤の快進撃を見せる。凄い。
作、演出の松森モへーの脳内で生じた5つの話をばらばらにして同時進行で展開する。それはモへーの思いつきでしかない。書けない作家が必死で書いたエピソード。とてもバカバカしくて強烈。確かに圧倒される。しかし、それが狂気として伝わってこないのがつらい。
南米を旅する4人のうちのひとりが行方不明になる。その行方不明のヨーコが5つのお話を横断する。作家のモヘーと彼女がイコールとなり頭の中をかき回す。
冒頭のコメントで、これから始まる芝居は自分の頭の中のぐちゃぐちゃしたものがそのままです、とかいうようなことをモヘー本人が熱く語る。さらには、本編の冒頭で、ひとりの女優が、芝居をやめて社会人になり1年、また芝居に戻ってきてごめんなさい、とかいう告白が入る。このふたりのことばに導かれて芝居は始まる。
ぐちゃぐちゃになった頭の中が溢れ出すことで何が生じるか。それがちゃんと見えてきたなら面白いのだが、そうはならない。「好きなものは好きなだけしゃぶり尽くす、髄まで」というチラシにあるコピーが体現できたならよかったのだけど、これではしゃぶり尽くせない。モヘー氏はラストでジャージを脱ぎ捨ててパンツ一丁になる。裸になったことで何が生じるか。5つの話はバラバラなままでいいけど、モヘーの狂気はひとつになるべきだ。そこにたどりつく芝居であって欲しい。それはモヘーとヨーコがこの脳内ドラマを通してどこにたどりつくのか、ということだ。語り部であるふたりがこの混沌の果てで何をみせるのか。それがこの芝居の答えであろう。