習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『クリード』

2015-12-21 20:53:00 | 映画
なんとこれは『フルートベール駅で』の監督の新作なのだ。『ロッキー』シリーズの新作という宣伝に乗せられて見たのだが、あまりに出来がよくて、誰が監督しているのか、気になった。チラシには(たぶん)若手監督としてしか紹介されてない。(チラシはどこかに行ってしまったので確認できない。でも、どこにも『フルートベール駅で』のことは書かれてなかったはず)

ちゃんと、教えてよ。でも、最初から知っていたら、もっと期待して見てしまい、こんなにも感動しなかったかもしれない。「前作のほうがよかったね」とか言いそう。インディぺンデント映画とメジャー映画ではその取り組み方が違う。でも、この2本はどちらも、実にいい映画だ。何をさせても巧い人は巧いという話なのだ。


シルベスター・スタローンのもとに送られた台本があまりに素晴らしかったため、彼自らプロデュースの乗り出して『ロッキー』シリーズの新作として自ら出演もした。これは安易なヒットシリーズの新作ではない。商売ではなく、純粋にこの映画を作りたくて作った。そんな映画なのだ。

そしてこれは老齢に達したロッキー・バルボアが、再びリングに立つ映画ではない。(それはもう『ロッキー・ファイナル』でやったし)あのアポロの息子が主人公なのだ。彼がフィラデルフィアを訪れ、引退したロッキーにトレーナーを依頼する。主人公は彼だ。

実によくできている。『ロッキー』シリーズを継承し、そこから新しい物語を引き継ぐ。そんなあざといことをしているのに、それが全然嘘くさくない。それどころか、ここから新しいドラマが確かに始まるのだ。ライアン・クーグラー監督は『ロッキー』シリーズへのオマージュではなく、それを引き継ぐ。そういう意味でも、サブタイトルである『チャンプを継ぐ男』というのは正しい。(ただ、この安易すぎるタイトルはこの映画にふさわしくないから、僕は使わない。)スタローンの意志を継ぎ、21世紀の『ロッキー』を作り上げた。主役のマイケル・B・ジョーダンも素晴らしい。ラストの試合のシーンはあんなにも抑えた見せ方で静かなのに興奮する。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『恋人たち』 | トップ | 星野智幸『呪文』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。