有川浩はとても上手い。彼女はこういう小さな物語を小さなままできちんとまとめる。それって、簡単そうに見えてけっこう難しいことなのだ。身の丈にあった作品を作ること。それは『阪急電車』の時にも、感じた。先日あの小説の映画版を見てがっかりした理由は、突き詰めると、あそこにある小さなお話を、大きな映画にしてしまったからなのだ。豪華キャストによる大作映画ではなく、たとえそういう構えでも映画自体はとてもささやかな小品であるべきだった。なんかアプローチからして、あれは間違っている気がする。ローカル線でのどうでもいいような出来事の積み重ねがほんのちょっとした奇跡を生む瞬間を見せる。それがあの映画の使命だったはずだ。
さて、本題である。本作は2つの中編小説からなる連作だ。しかも、2つは同じような話である。それを、ある意味で反対の側面から見せることで、物事の表と裏、というか、その両面を描こうとするという仕掛けになっている。同じ2人を主人公にして、完全に見る角度を変えただけの連作にしてもよかったのだが、そうはしない。これらは別々のお話だ。それはまるで双子のようによく似ているが、微妙に違う。その差がおもしろい。
いずれも作家とその夫の話である。その作家の大ファンである夫は、彼女の創作活動を陰になり全力で支える。それが自分の使命だと思っている。A面は作家が死ぬ話。B面は夫が死ぬ話。小説を書くということを生業とする女性を軸にして、彼女を支えるその夫との愛情物語として、全体が構成されてある。
これはそんな2人だけの世界だ。そこに介在する他者は彼らにとって、邪魔な存在でしかない。それは彼らが周囲を排除するからではない。周囲が2人の世界でひっそり暮らす彼らに介入してくるのだ。それどころか、彼らの幸せを外部は壊そうとする。それを2人は必死に阻止して、自分たちの幸福を守る。それだけの話である。なのに、ただそれだけのことが、こんなにも胸に迫る。
さて、本題である。本作は2つの中編小説からなる連作だ。しかも、2つは同じような話である。それを、ある意味で反対の側面から見せることで、物事の表と裏、というか、その両面を描こうとするという仕掛けになっている。同じ2人を主人公にして、完全に見る角度を変えただけの連作にしてもよかったのだが、そうはしない。これらは別々のお話だ。それはまるで双子のようによく似ているが、微妙に違う。その差がおもしろい。
いずれも作家とその夫の話である。その作家の大ファンである夫は、彼女の創作活動を陰になり全力で支える。それが自分の使命だと思っている。A面は作家が死ぬ話。B面は夫が死ぬ話。小説を書くということを生業とする女性を軸にして、彼女を支えるその夫との愛情物語として、全体が構成されてある。
これはそんな2人だけの世界だ。そこに介在する他者は彼らにとって、邪魔な存在でしかない。それは彼らが周囲を排除するからではない。周囲が2人の世界でひっそり暮らす彼らに介入してくるのだ。それどころか、彼らの幸せを外部は壊そうとする。それを2人は必死に阻止して、自分たちの幸福を守る。それだけの話である。なのに、ただそれだけのことが、こんなにも胸に迫る。