すこしも笑えない。まったく面白くない。チープで退屈。誰もがこの映画には驚いたはずだ。今まであれだけ楽しませてくれた三谷好喜だったのに、この作品を期待して見始めた観客を急速冷凍させてしまう。
これはどういうわけなのか。宇宙を舞台にしたSF映画というスタイルの中でしか語れないような、ちょっとエロチックで、笑える、でも、実はシリアスなラブストーリーを目指した、と本人は言うけれど、完全にからまわりしている、と思ったのは僕だけではないだろう。きっと誰もがそう感じたはずだ。ないわぁ、と思って途中からイライラした人もたくさんいるだろう。
正直言ってつまらない。寒い映画だ。なぜ、こんなことになったのか。『バーバレラ』とかを引き合いに出していたが、チープなSFをわざと目指した。そこは確信犯だ。CGとか、世界観とか、豪華に、リアルに描くのではなく、書割然としたセットで、ドタバタ騒動を見せるのが狙いだ。そうすることで、本来なら恥ずかしいものになるはずなのに、そのことで、描こうとする恥ずかしくなるような「恋愛もの」が、堂々と描ける、と踏んだらしい。だが、それはない。
ただ、ここには恋愛のリアルすらないからだ。空疎なコメディにしかならないから、ますます嘘くさく、安っぽくなるばかりだ。バラエティ番組を見ている気分にはうんざりする。宇宙の果て、場末のハンバーガーショップを舞台にした1幕物。これはよくある小劇場の芝居のパターンだ。
映画としての躍動感や、ロマンはない。しかも、演劇としての面白さもない。不条理のエスカレートが現実を凌駕していくようなドキドキもない。特に主人公である夫婦(香取慎吾と綾瀬はるか)の心のすれ違いが描けないのは致命的だ。地球を遠く離れて暮らす彼らの孤独や哀感、それだけでもちゃんと伝われば、納得のいく映画になったかもしれない。「登場人物全員宇宙人」(地球人も含む、ということだろう)という設定にまるで面白さを付与できてないのも、致命的だ。