2018年に神戸アートビレッジセンターでリーディング公演として上演された階の久野奈美による作品をトレモロの早坂彩が演出して再演。再演大博覧会だけど、本格演劇作品としてこの台本の公演はこれが初演となる。
4話からなるオムニバス・スタイルの70分。とても濃密で、爽やかな作品に仕上がっている。久野さんの脚本を早坂さんが適切な距離感を持って描いた。だけど、その距離感がこんなにも心地よい。神戸という街の100年以上の歴史をたった70分の劇にする。震災の後、山の上から天体観測をする3人の話から始まる。『パノラマビールの夜』を想起させるエピソードだ。この小さな話を受けて、港が出来ることで閉鎖される喫茶店の話につなぐ。海が舞台になる。そこからさらに時間は遡ってこの町がまだ、港町になる以前の話に。そこではふたりの男女の別れが描かれる。3つの話は未来、現在、過去を象徴する。(未来が1995年1月というのが泣ける)同時に一枚の絵に未来を象徴させる。
そして、ラストのエピソードでは過去から未来までの時間がひとつになる。120年に及ぶ歴史を振り返り、この先に想いを馳せる。コンパクトにまとめられた小さな芝居は100年以上に渉る山と海に挟まれたこの街の歩む日々を伝える。対面舞台も適切。あらゆる角度から見ることが可能な作品になる。久野さんと早坂さんのコラボが見事な成果を挙げた。