古川原壮志監督の長編デビュー作。彼はCMで活躍する新鋭らしい。短編映画で評価されて今回の劇場用長編デビューに至る。この作品も、もとになっている短編映画をセルフリメイクしたもののようだ。
フィックスの長回しを何度となく繰り返してそれを作品のベースにする。だがそこでは何も起きないからイライラさせられる。観客をわざと挑発しているのか。最初は新鮮だったが、しつこいから、腹立たしくなってくる。そのくせ、何の説明せずに問答無用で短いカットをつないでいく。時制も空間もが錯綜する。人間関係はわからない。だいたい彼らに何があったのかもわからない。妹の事故死。事故現場となったトンネルにたまたま行くことになるという展開のきっかけの安易さ。後ろ姿ばかりで表情は見せないし、描かない。だいたい劇場で見ているのに真っ暗で何が映っているのかすらわからない映画ってどうよ、と思う。
兄の大学生活、子ども時代の兄妹。妹の死以降、生ける屍になる現在。全く主人公である彼(青木柚)の心中を語ることはないままラストまで。ビーガンの映画もこんな感じでわがままだけど、あれには有無を言わさない圧倒的な訴求力があった。だが、この映画はそうじゃない。まだ独りよがりのレベルに留まる。途中からはたった87分の映画なのに、それが苦痛で長かった。
描いていく作品世界は好きだから、かなり残念だ。きっと上手く嵌ったら大好きな作品にだってなったはずなのに。