なんとモンゴル映画である。だからといって草原とかゲルとか、ではない。都会が舞台で、主人公の女の子は大人のおもちゃ屋でバイトしている。最初あまりにおぼこいので、彼女が大学生には見えない。もっと子どもに見えた。なのに彼女の醒めた反応や対応はチグハグでそのギャップが不思議な感触を抱かせる。アダルトグッズショップに何のためらいもなく入って店番をする。恥ずかしがらずにお客に商品の紹介もする。当たり前だけど、そういうことが最初から素のままでできるってなんだか凄い。おぼこいルックスからはそんな対応はなかなか想像できない。
お店のオーナー(40代の女性)に気に入られて、彼女からいろんなことを学ぶことになるのだが、そこでも相変わらず無表情。セックスにも無関心、無反応。年ごろの娘なのに興味ないみたいなのだ。大学の友人の男の子もいるけど、恋愛感情はないみたい。
アダルトショップで働くことで今まで知らなかった世界と出会い成長していく姿を描くというフォーマットから微妙に逸脱していくのが、面白いとも思うけど、変な感じ。途中に突然登場して歌い出すミュージシャンも可笑しい。あれは何なんだろうか? モンゴルでは有名なグループらしいが、意味はない。だいたい冒頭のバナナの皮で滑って骨折って、安物のバラエティじゃないんだから、と思うけど、もちろんわざとしている。そんなベタなシーンから始まり、醒めた少女の登場につなぐ。
後半になるとようやくモンゴルらしい草原もちゃんと出てくる。わざと都会だけで話を展開していくのではなく、ウランバートル(だよね、たぶん)から少し離れたら自然はある。それなりに裕福な家庭の恵まれた女の子がセックスに目覚めるまでの話というパッケージからは遥か遠い映画で、なんだかほのぼのする。髪を切ったら「おしゃれさん」になるというベタな展開もあざといけど、あざやか。