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映画・演劇のレビュー

『グリーンナイト』

2022-11-30 18:54:30 | 映画

こんな映画ありなのか。この手の「騎士もの」はないわけではないけど、このわけのわからなさは大概だろ。ではこれがはちゃめちゃな映画なのか、と言われるとそうではなく、実に端正な映画なのだ。丁寧に作られてある。重厚な映画だ。なのに、いや、だからこのわけのわからなさが際立つ。グリーンナイト(緑の騎士)と戦い勝つと、1年後、自分がグリーンナイトの首を取ったのと同じように首を切られて死ぬことになる、なんていう予言で幕を開ける冒険譚だ。6世紀頃のブリテン、円卓騎士でおなじみのアーサー王伝説が題材だ。王の甥サー・ガウェインを主人公にした14世紀の叙事詩を原作しているのだが、なんだかありえない。

お話は1年後から本格的に始まる。冒頭のグリーンナイトとの戦いのシーンもすごかった(グリーンナイトは最初から戦う気はなくて「さぁ、俺の首を切り取れ」とばかりに差し出すのだ!)が、死にに行くために旅に出るという展開も大概だ。映画はこの旅の途上での様々なドラマが描かれるのだが、これもまた、一筋縄ではいかない。荒唐無稽というのは少し違う。でも、このわけのわからなさはふつうじゃない。そこに込められた寓話を読み込むべきなのだろうが、簡単ではない。だが、わからないなりにそれぞれのエピソードには引き込まれる。そしてついにグリーンナイトのもとにたどり着くのだが。そこで待ち受ける結末はいかに!

驚いた。こんな話なのか。それじゃぁ、それまでの展開は何だったのだ。しかも、ラストで命乞いをするとか、なんなんだという展開に啞然。あの『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』のデビッド・ロウリーが監督・脚本したのだからこんなの当たり前に話なのだろうが、前作と違い今回はこれだけの大作である。なのに、同じようにわけわかめ。凄すぎる。ここに込められたさまざまな意図を明確にしてもらってもなんだかなぁ、と思うし、そんなのはどうでもいい。それよりもこの不思議な世界を堪能したい。デビッド・ロウリー版ダークファンタジーはふつうとは一味も二味も違う。


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