GW中にはこの1冊しか読んでいない。読書は通勤の往復の時間にするものだから、家にずっといたならば、読書はできないからだ。しかも、図書館が閉まっているから、新しい本は手元にはない。いろんな意味で苦しい毎日である。
突然、父が死にその遺体をひとりで引き取りに行く。両親は離婚し彼は父育てられた。彼の幼いころ両親は離婚しており、大学進学後は東京で下宿暮らし、父とは疎遠になっていた。大学卒業して1か月。仕事をやめた。入社した職場は典型的なブラックで、耐えきれなくなった。そんな時、父の死の連絡がきた。お話はそこから始まる。
父も仕事をやめていた。海辺の町に移り住んでいた。父が住んでいた家に行く。そこには彼の知らない父の姿があった。父の人生について、何も知らなかったし、想像することもなかった。18歳から4年間、ひとりで生きてきた。社会人になって1か月。仕事も失った。遺品整理を通して、自分の知らなかった父を知る。
自分らしく生きろ、なんて人はよく言うけど、そんなものがちゃんとわかって生きている人がどれだけいるのか。自分が何をしたいか、どう生きるべきなのか、何一つわからないまま、ただがむしゃらに、あるいは、ただ流されるままに、生きている。そんなものじゃないか。
「自分の人生がおもしろくないなら、なぜおもしろくしようとしないのか。他人にどんなに評価されようが、自分が納得していない人生なんてまったく意味がない」
この一言を起点にして、父の人生が動き始めた、ということを知る。そして、その一言を投げかけたのは、ほかならぬ自分である。自分を見失った男が、昔父に向けて放った自分のことばを通して、もう一度自分の立ち位置を見出していく。ゆっくりと流れていく海辺の町での時間、生活を通して、彼が自分を見出していく。この静かな小説の描く時間はとても気持ちよく胸に沁みてくる。
そうだ、今、時間のあるときに断続して見ている『ボーイフレンド』の魅力もこれと同じ。「何をしなければならないのか、今一度、人生を見直せ、」というメッセージだ。主人公のチャ・スヨン(ソン・ハギョ)は、人生をあきらめて生きていた。離婚を機にホテルの再建だけを目標にして生きた。しかし、それは人生の目標ではないと気づく。今までの不本意な生き方からの逃避でしかなかったのかもしれない。ひとりの男性と出会い、恋をして、自分の人生を見つめなおす。
このドラマがおもしろいのは、ラブストーリーの側面だけではなく、恋をすることで、彼女が見失っていた自分を見出していく過程を大事にしたところにある。